経済くりっぷ No.29 (2003年10月14日)
9月10日/教育問題委員会(委員長 樋口公啓氏)
「画一と受身から自立と創造へ」を目標に教育の構造改革を断行する
- 遠山文部科学大臣と懇談
教育問題委員会では、さる9月10日、遠山文部科学大臣を招き、教育改革の進捗状況と今後の方針について説明を受けるとともに、種々懇談した。
○ 遠山大臣説明要旨
1.改革の基本理念
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先行きの見えない不透明な時代にあって、教育の使命は、新しい時代を切り拓く心豊かでたくましい日本人を育成することにある。20世紀後半の日本の教育システムは他国のモデルにもなっているが、あまりにも画一的かつ受身の姿勢が強かった。この反省に基づいて、
- 「個性」と「能力」の尊重、
- 「社会性」と「国際性」の涵養、
- 「多様性」と「選択」の重視、
- 「公開」と「評価」の推進、
という4つの観点から、改革を推進する考えである。初等中等教育と高等教育のあらゆる関係者が同じ目標に向かって努力することが重要である。
2.具体的な施策
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それぞれの課題の達成に向けた主な施策は以下の通りである。
(1) 「個性」と「能力」の尊重
- 習熟度別指導や少人数授業などを通じた個性や能力に応じた指導を充実
- 体験学習などにより学習意欲を向上
- 特色ある大学教育を支援するための助成を実施
- 社会をリードするプロフェッショナル養成のため専門職大学院制度を創設
(2) 「社会性」と「国際性」の涵養
- 勤労観・職業観を醸成する教育を充実
- 「『英語が使える日本人』の育成のための行動計画」に基づく取り組みを実施
- 産学官連携推進事業(例「知的クラスター創成事業」)を推進
(3) 「多様性」と「選択」の重視
- 新しいタイプの高等学校の設置を促進
- 地方の判断による柔軟な学級編成を可能とし、少人数学級を実現
- 国立大学の法人化を通じた自律性の拡大、民間的経営手法の導入、弾力的な人事・予算システムへの移行
- 世界最先端の大学院づくりを支援
(4) 「公開」と「評価」の推進
- 学校評価と情報提供を実施
- 教員の新しい評価システム構築に向けた調査研究を実施
- 大学の教育研究の質を保証するため自己点検・評価、第三者評価制度などを導入
3.文教関係予算について
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昭和30年代には、一般歳出に占める文教関連費は社会保障費と同程度(約15%)であったが、平成15年度では社会保障費の40%に対し11%にとどまっている。未来を担う子どもへの投資が低下していくことは問題である。諸外国はいずれも自国の教育を真剣に考え、予算に組み込んでいる。緊縮財政の中ではあるが、予算の再配分によって対応する必要がある。
《担当:社会本部》
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