経済くりっぷ No.24 (2003年7月8日)

6月9日/中東・北アフリカ地域委員会(委員長 渡 文明氏)

日本は国際社会の一員として、イラク復興に協力する


サミットはじめ国際的な場でイラク復興が注目されており、外務省の高橋文明イラク復興支援等調整担当大使、経済産業省通商政策局の守本憲弘中東アフリカ室長より、イラク復興に向けた日本政府の取組み、今後の展望と課題などについて説明をきいた。

I.高橋大使説明要旨

  1. イラクの戦後処理、和平構築に時間がかかっている。5月12日、ブレマー大使(文民行政官)が着任し、連合暫定統治機構(CPA)がイラク復興人道支援室(ORHA)を整理統合する形で発足した。CPAが徐々に権限を委譲していくイラク人による暫定行政当局の立ち上げは、7月一杯にずれこむとみられる。

  2. 5月22日の国連決議は、政治分野でイラクの統治に関する米英の特別の権限を追認した。また、治安維持と復興に各国が貢献するよう訴えた。さらに、対イラク経済制裁の解除と、オイル・フォー・フードの段階的解除を決定した。米国が描いていたシナリオを国際社会が承認し、国連もイラク復興に重要な役割を果すこととなった。

  3. 日本政府はORHAに人員を派遣するとともに、5月8日に大使館を再開した。さらに、5月11日から14日までバグダッドを訪問した茂木外務副大臣が、ブレマー大使等と懇談し、学校、病院等の民政施設を視察した。新しい段階を迎えたイラク復興政治プロセスへの参画の重要性が確認された。当面の課題として、行政サービスがきちんと行われていないことから、治安の回復、電力、水などのライフラインの復旧、医療、教育、保健などの人道支援、雇用対策が重要であると認識し、5月21日に5,000万ドル規模のイラク支援策を発表した。今後、中期的な取組みを含め、具体的なプロジェクト形成を目的とする官、あるいは官民合同調査団の派遣も考えたい。

  4. イラクは石油収入が見込めるので、無償資金援助は限界がある。円借款の再開が待たれるが、イラク政府の発足に加えて、過去のイラク債権問題を解決する必要がある。日本としては官民合わせて6,000億円以上の債権があり、国際的な枠組の中で解決していきたい。さらに、小泉総理が先の中東諸国訪問で発言したように、日本はアラブ諸国と協力しながらイラク復興に関与するとともに、国際的なイラク復興支援会議の枠組みを構築すべく努力している。

II.守本室長説明要旨

  1. イラクを訪問したが、イラク復興の優先順位の第1は治安の回復、第2はガソリンの供給であった。停電の影響で製油所の稼働率が下がり、ガソリンスタンドには、何キロもの車列ができていた。経済活動が本格的に戻るのは、もう少し先になる。

  2. 治安は、イラク復興の最大の障害である。米英兵とイラク人の間で衝突が発生し、銅線泥棒など経済目的の犯罪が起きている。CPAは短期で復興の目途をつけたかったが、長引こう。現地では専門家に対するニーズがあり水や電力分野で日本への期待を感じた。

《担当:国際経済本部》

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