経済くりっぷ No.21 (2003年5月27日)

4月24日/貿易投資委員会総合政策部会(部会長 團野廣一氏)

WTO新ラウンド交渉の推進に向けてさらなるモメンタムが必要


貿易投資委員会総合政策部会では、7月頃を目処にWTO閣僚会議に向けたわが国経済界の意見を取りまとめるべく、検討を開始した。第1回会合では、外務省経済局の鈴木庸一参事官より、WTO新ラウンド交渉の現状と今後の展望等について話をきくとともに懇談した。

○ 鈴木参事官説明要旨

1.新ラウンド交渉の現状

農業交渉の大枠(モダリティ)については、本年3月末までの期限内合意ができなかったが、新ラウンド交渉全体は2004年末の期限内合意を達成し得ると考える。そのために、本年9月10日〜14日にメキシコのカンクンで開催される第5回WTO閣僚会議がきわめて重要である。

2.各交渉項目の現状と展望

サービス貿易:
多くの発展途上国が自由化の初期オファーの期限(3月末)を守らない等の問題はあるが、比較的順調である。

非農産品市場アクセス:
5月末に大枠合意の期限となるが、関税率の下げ幅等について各国間で意見の隔たりが大きい。

ルール:
特に日本が強く求めているアンチダンピング協定の規律強化については、米国を除く各国の支持を得つつある。

知的所有権:
地理的表示の保護をめぐって、欧州とその他の国で対立がある。

環境:
議論が盛り上がっていないが、カンクン閣僚会議で、今後、どのように議論するかを決めることとなっている。

紛争解決了解:
5月末が合意期限であるが、議論が紛糾しており、おそらく先送りになるだろう。

新分野(シンガポール・イシュー:投資、競争、政府調達の透明性、貿易円滑化):
農業交渉で一定の進展があれば、カンクン閣僚会議で交渉を開始することになろう。

3.カンクン閣僚会議に向けて

今後、何回か主要国の閣僚レベルが貿易問題について議論することになる。4月末にはOECD閣僚理事会、同時にWTO非公式閣僚会議が開催され、6月初旬の先進国首脳によるエビアン・サミットでも貿易が議論になる。6月下旬にはエジプトでWTO非公式閣僚会議が予定されている。
こうした会議の結果を受けて、7月末にはジュネーブのWTO一般理事会において、カンクン閣僚会議で議論する項目を決める。
経済界もミッションを派遣し、意見をWTOや各国政府に伝えることが重要である。

4.カンクン閣僚会議における議論の展望

今後の交渉によるが、カンクン閣僚会議では、

  1. 農業交渉の大枠、
  2. 非農産品市場アクセス交渉の大枠、
  3. 知的所有権の地理的表示、
  4. 貿易と環境、
  5. 紛争解決了解、
  6. 新分野の交渉開始、
といった項目について閣僚に決めてもらうことになるだろう。
WTO新ラウンド交渉の帰趨は、最終的には各国の政治的な意志にかかっている。

《担当:国際経済本部》

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