3月28日/国土・都市政策委員会(共同委員長 岩沙弘道氏)
政府は、都市再生本部のリーダーシップの下、これまでに、都市再生特別措置法に基づく都市再生緊急整備地域の指定、五次にわたる都市再生プロジェクトの決定、都市再生促進税制や都市再生ファンドの創設など、都市再生に向けた施策を相次いで打ち出している。そこで、国土・都市政策委員会では、内閣官房都市再生本部の和泉洋人事務局次長を招き、「都市再生の現状と課題」について説明をきくとともに、意見交換を行った。
わが国の国際競争力は年々低下しており、2002年には30位となった。技術力や経済規模は依然としてトップクラスであるものの、オフィスの賃貸料や電力料金等が高いこと、危機的な財政赤字であること、外国企業への開放度が低いことなどが諸外国に比べ劣っている。こうしたことから、わが国の国際競争力の強化や経済活性化に資する都市再生への取組みを集中的、重点的に行う必要がある。
このような背景の下、2001年5月に発足した都市再生本部では、小泉構造改革の一環として「効率性重視」と「民間重視」の視点から都市再生への取組みを行っている。
都市再生本部の活動内容は、
21世紀の新しい都市を創造し、20世紀の負の遺産を解消するという視点で、民間投資への誘発効果や土地の流動化に資するものを「都市再生プロジェクト」として決定し、予算の重点的配分を実施している。
具体的には、第一次決定では、東京都臨海部における基幹的広域防災拠点の整備、中央官庁施設では初めてとなる文部科学省と会計検査院のPFIによる整備などを選定し、予算措置等を講じている。
第二次では、羽田空港再拡張などの空港の機能強化と空港への鉄道アクセスの利便性向上、国際港湾の機能強化、首都圏三環状道路等の整備などを選定した。また、大阪府におけるライフサイエンスの国際拠点形成や、都市部における保育所待機児童の解消施策なども選定した。
第三次では、全国で25,000haある密集市街地における最低限の安全性の確保や、約300万戸ある公共賃貸住宅ストックの総合的活用などを選定した。
第四次では、東京圏におけるゲノム科学の国際拠点形成、北部九州県におけるアジア産業交流拠点の形成、ならびに地方中枢都市(札幌・仙台・広島)における先進的で個性ある都市づくりを選定した。
第五次では、国有地の戦略的な活用による都市拠点形成として、大手町合同庁舎跡地の活用による国際ビジネス拠点の再生などを選定し、準備会を発足させた。
都市開発を手掛ける際、民間事業者が障害と感じることは、
大都市のみならず、全国の都市の再生を図るため、地方公共団体等から提案を募集したところ、840件もの応募があった。こうした提案の中で、解決すべき共通の制度課題について、関係省庁に検討を依頼するとともに、「防犯まちづくり協議会」など、地方公共団体等からなる検討体制を構築し、検討を開始している。
都市再生本部における取組みは、構造改革特区を前倒しで実施しているとも言える。都市再生緊急整備地域に指定された44地域のうち36地域が特区の提案を行った。今後は、京浜臨海部の再生への取組みに見られるように、「都市再生緊急整備地域」と「都市再生プロジェクト」、そして「構造改革特区」の相乗効果が発揮され、都市再生を通じ、経済の活性化が図られることを望む。
都市再生事業に資金を流入させるべく、平成14年度補正予算において、都市再生ファンド(仮称)を創設した。また、平成15年度税制改正では、緊急整備地域における民間事業についても法定再開発事業に準じた税制措置を講じることとした。このように、規制緩和、金融、税制など、都市再生に必要な制度面での手立ては全て講じてきた。今後は民間事業者がこれらの仕組みをいかに活用していくかが重要である。
その他、区分所有法およびマンション建替え円滑化法や密集市街地法の改正、都市整備基盤公団の独立行政法人への移行など、制度改正を進めているところである。