新ビジョンでは、時間的・空間的余裕から新しい豊かさが生まれるという考えに基づき都市・居住環境の改善を取り上げました。バブルの形成から崩壊の過程において都市住民は、土地・住宅価格の高騰と暴落に翻弄されましたが、最近では、防災面での不安やコミュニティの崩壊などにも直面しています。
いま、地価高騰の名残である相続税評価の高まりによって、郊外部の緑豊かな優良な一団の土地が細分化され、地域にとっても貴重な緑が失われる大きな危機となっています。そこで、個人の営みが街の環境を改善し、結果として個人が豊かさを感じることのできる住環境を享受する。そして、そうした個人単位の取組みが、あたかも生物の細胞分裂のごとく、街全体の価値を再生していく、という可能性を追求してみたいと考えました。
その実践的な取組みとして、都市の郊外部に残された一団の土地において、土地所有者と住民の発意による、コーポラティブ住宅などの手法を活用した住まいづくりが上げられます。共同の菜園や庭などを確保し、春夏秋冬、自然の力を活かした住みよい環境と広めの空間を手に入れることができるようになるばかりか、共同価値に裏付けられたコミュニティが形成され、入居後、「近所付き合い以上、家族未満の関係」が築き上げられる可能性も増します。
まだ数は多くはありませんが、私たちは、市民が自発的に取り組む、そうした街づくりのプロジェクトを支援していきたいと考えています。