1月29日/第39回四国地方経済懇談会
日本経団連・四国経済連合会(四経連)共催の標記懇談会が高松市において開催された。日本経団連側からは、奥田会長、香西・西室・柴田の各副会長、高原評議員会副議長が出席し、地元経済人約120名の参加のもと、活発な意見交換が行われた。
四国経済は、依然として厳しい状況が続いており、重要創出のための政策をもっと強力に推進すべきとする声が大きくなっている。四経連が会員企業に対して昨年12月に実施したアンケートでも、98%の企業が景気の状態を「下降」ないし「底ばい」と回答している。また、経営環境がグローバルにドラスティックに変化していることを背景に、過去10年で製造業の事業所が約3割も減るなど、長い低迷に苦しんでいる。
このような状況のもと、新たな地域産業のあり方や人口減少時代の東京と地方の関係について、真剣に考えていく必要がある。四経連では、産学官の連携による新産業の創出や四国各県の国立大学と共同で人口問題の調査を開始するなど、魅力ある四国の実現に向けて取り組んでいる。
21世紀は観光が基幹産業の一つになるといわれており、四国でもさまざまな取組みを行っている。特に、最近話題となっている讃岐うどんブームは、四国の最大の弱点であった情報発信力の強化に貢献している。また、本年は、旅行業関係者やJR各社の共同観光PRが、四国を重点地域として実施される予定であり、観光客の増加が期待できる。
しかし、四国への観光入込客数は、本四3架橋がそれぞれ開通した一時期を除いて、漸減傾向にあるのが実態である。そこで四経連では、「四国歴史文化道」事業の推進や、四国総合ホームページを開設するなど、全国から多くの人々に四国に来ていただけるよう努力している。
四国には、日本一、世界一のシェアを持つナンバーワン企業や独創的な技術に根ざすオンリーワン企業が数多く存在しており、ベンチャー企業が生まれる素地が十分にある。そこで、四経連が主体となり、昨年6月に、「四国産学官連携推進会議」を設立し、新産業創出に向けた環境づくりの支援を行っている。
また、四国の社会基盤、産業構造の本質的な変化を長期的な観点からとらえ、地域に根ざした提言を行うため、昨年11月に、四国四県の国立大学経済学系研究者と連携し、産学共同研究を開始した。共同研究の最初のテーマとして「四国地域の人口流動の現状と課題」を取り上げ、これからの中央と地方の関係のあり方や四国の活性化方策について検討を進めているところである。
昨年の道路関係4公団民営化の議論は、効率性や採算性の検討に終始し、今後の社会資本形成の必要性や地方の意見がほとんど取り上げられず、大変残念な結果となった。
これからの社会資本整備は、新しい時代にふさわしい役割分担の明確化と重点分野の絞り込みを行う必要がある。基本的なインフラは、国が責任を持って整備し、身近な社会資本は各地域がそれぞれ実情に合わせて整備すべきである。高速道路は、医療過疎地域が多い地域にとって、緊急医療に欠かせない生命線であり、四国では、今だ、3千万人がその恩恵に浴していない。「安心・安全」の確保は国の基本的責務であり、着実に整備を進めてもらいたい。
また、本四3架橋の通行量が計画を下回っている最大の要因は、通行料金の高さである。産業界は、デフレ不況の中、コスト削減のため、時間短縮効果を犠牲にして、フェリーなど、より安い輸送機関を使わざるを得ない状況にある。通行料金を大幅に値下げし、本四架橋の有効活用を図るべきである。
自由討議において、以下のような意見が出された。
香西副会長より税制改正をめぐる動向について、西室副会長より社会保障制度改革への取組みについて、それぞれ活動報告があった。また自由討議に際し、西室副会長より地方分権社会に向けた取組み、柴田副会長より地域経済の活性化と地域再生の鍵を握る人的資源の育成、高原副議長より規制改革を通じた産業活性化と四国の広域観光戦略について、それぞれ発言があった。
最後に、奥田会長より、四国におけるさまざまな取組みを踏まえつつ、日本経団連が本年1月に取りまとめた新ビジョン「活力と魅力溢れる日本をめざして」の実現に向けて積極的に取り組んでいくとの総括があった。