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奥田 碩 (おくだ ひろし) 日本経団連会長 |
今年の新年のテレビ番組で、建築家の安藤忠雄さんと対談する機会を得た。その中で、安藤さんから瀬戸内海の島々で行われている「どんぐり大作戦」のお話を伺った。
もともとは、安藤さんが弁護士の中坊公平さんと一緒にはじめた、産廃投棄で荒廃した島に緑を取り戻すために、一口1000円で寄附をつのって植樹をしようという運動だという。これに瀬戸内海の島々の小中学校が賛同して、寄附ではなく自分でどんぐりを拾ってそれを植え、名札をかけて世話をしていくという形で参加するようになった。学校には寄附のお金を使って桜の木を植えていく。これを毎年続けていけば、一年生が六年生になり、中学を卒業する頃には、花と緑のあふれる美しい島ができるだろう。多くの島の子どもたちには、やがて進学や就職で島を離れるときが来る。そのときに誇りと愛着の持てるふるさとを残せるのではないか。
私はこのお話を聞いて、深く感動した。もちろん、この人たちは環境を改善すれば地価が上がるなどという計算で参加しているわけではない。美しい島をつくるというビジョンに共感して行動しているのだ。リーダーが優れたビジョンを示し、自ら行動することで、人々の高い志を呼びさまし、ともに行動に向かわせることができる。荒廃した土地を緑豊かなふるさとに変えることができる。
今回の日本経団連の新しいビジョンは、広く国民の共感を得ることで、具体的な行動につながることを期待してつくった。このビジョンが、国民に広く読まれ、議論を巻き起こして、新しい日本をつくるための行動に結びついてくれることを願ってやまない。