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会長コメント/スピーチ  記者会見における会長発言 定例記者会見における十倉会長発言要旨

2024年3月11
一般社団法人 日本経済団体連合会

【副会長、審議員会副議長人事】

本日の会長・副会長会議において、定時総会(5月31日)で新たに副会長ならびに審議員会副議長にご就任いただく候補者を内定した。

副会長については、定時総会をもって、佐藤副会長、菰田副会長、安永副会長が任期満了により退任する。新たな候補者として、長澤仁志・日本郵船会長、髙島誠・三井住友銀行会長、兵頭誠之・住友商事社長、吉田憲一郎・ソニーグループ会長の就任が内定した。

審議員会副議長については、定時総会をもって、市川副議長、鈴木副議長、吉田副議長、武内副議長、出雲副議長が任期満了により退任する。菰田副会長、安永副会長に引き続き副議長にご就任いただくとともに、新たに、内田高史・東京ガス会長、井上和幸・清水建設社長、漆間啓・三菱電機社長、中田誠司・大和証券グループ本社社長、石井敬太・伊藤忠商事社長、次原悦子・サニーサイドアップグループ社長の就任が内定した。

いずれの候補者も、人格・識見、経営手腕、各業界における実績、さらに幅広く業種・業界のバランスなどを総合的に判断し、人選した。

〔副会長に女性の登用がなかったことについて問われ、〕今回新たな副会長への登用はないが、経団連は、女性をはじめ多様な人材が生き生きと活躍する社会を目指しており、人事についてもダイバーシティの観点を常に意識している。少し長い目で、人格・識見、経営手腕に優れ、指導力を有する良い候補者を探しており、来年以降も同じ考え方で積極的に検討する。

〔トヨタ自動車の豊田章男会長の登用がなかったことについて問われ、〕豊田氏は、自動車をはじめモビリティ産業に関する卓越した知見と、行動力を有する、素晴らしい経営者である。自動車業界はわが国の重要な基幹産業であり、モビリティ業界の中核を担っている。豊田氏にはモビリティ委員長として、ますますのご活躍を期待している。

【金融政策】

〔日銀の金融政策の見直しについて問われ、〕日銀は、適度な物価上昇が実現し、賃金と物価の好循環が始まったと判断できれば、金融政策の正常化に踏み切りたいと考えているのであろう。政府・日銀の掲げる2%程度の適度な物価上昇が実現する確度は高まっているのではないか。日銀の判断材料という視点もあってか賃金引上げにひとしお注目が集まっているのかもしれない。いずれにせよ、構造的な賃上げによる好循環の実現に向け、今年の春季労使交渉が昨年以上の結果になることを大いに期待している。

もっとも、好循環を実現するには、賃金引上げのモメンタムが中小企業まで波及しなければならない。春季労使交渉の集中回答日(3月13日)の回答は大手企業中心であるため、4月以降の中小企業の賃金引上げの結果も注視していく必要がある。社会全体で好循環が実現しているかどうかは、日銀が様々な指標を見て、総合的に判断されることであるが、そう遠くない将来において、金融政策の正常化に舵を切る可能性が高いのではないか。

〔日銀の金融政策の見直しに対する日本企業の備えについて問われ、〕中長期的に見れば、異次元の金融緩和を長く続けることは健全ではなく、金利のある世界に戻していく必要がある。そう遠くない将来に金融政策が正常化されることを前提に、各企業は準備を進めているだろう。日銀は、経済への劇的な影響が生じないよう、マイナス金利を解除した後も極めて緩和的な金融環境を当面続けるとしており、各企業は適切に対応していくのではないか。

【賃金引上げ】

〔春季労使交渉の現時点の状況や、中小企業への波及について問われ、〕昨年以上に賃金引上げのモメンタムを感じている。経団連は、春季労使交渉における経営側の基本スタンスを示す「2024年版経労委報告」の周知活動を全国各地約50ヵ所で展開してきた。その折々、中小企業の方々から、物価動向への対応に加え、人材の確保・定着の観点からも、ベースアップを含む賃金引上げを前向きに検討しているとの意向が多く示されたと聞き、非常に心強く感じている。大企業だけでなく、中小企業も含めて賃金引上げのモメンタムが全国で広がっていくことを大いに期待している。

〔地方の中小企業の賃金引上げについて問われ、〕各地域の物価水準は異なるものの、日本全国で高い賃金引上げ率の実現を目指したい。地方にも大企業やその事業所は存在する。それら発注側企業が、「パートナーシップ構築宣言」に賛同し、中小企業の賃金引上げにつながる適正な価格転嫁に取り組んでいる。外部環境は依然厳しく、全ての地方の中小企業が一朝一夕でできるというものではないが、今年、さらには来年以降も、経団連は粘り強く取り組みを継続していく。

〔日産自動車が公正取引委員会から下請法違反の勧告を受けたことも踏まえ、パートナーシップ構築宣言の実効性について問われ、〕価格転嫁以前の問題であり、あってはならないことである。サプライチェーンの裾野の広い自動車産業のトップ企業で起こったということは極めて残念である。

パートナーシップ構築宣言は2020年5月に導入されたばかりで歴史も浅い。形骸化を憂うよりも、むしろその実効性の確保を加速させていく段階にある。官民連携で取り組みを進めていく。

【東日本大震災】

〔東日本大震災(2011年)以降の日本企業の災害リスクへの備えについて問われ、〕資本金10億円以上の大企業の約7割が事業継続計画(BCP)を策定している(2021年度)が、災害への備えに完璧はなく、常に進化させていかなければならない。新型コロナウイルス感染症を経て、地震等の個別事象ごとではなく、様々な非常事態の「結果として生じる事象」に着目した、オールハザード型BCPの策定が必要であるとの認識に至った。加えて、令和6年能登半島地震によって、ライフラインや幹線道路、鉄道といったインフラの複線化の重要性も再認識した。日本は災害列島であるがゆえに、災害への備えの重要性、必要性を忘れることなく、レジリエントな態勢を官民連携でつくっていかなければならない。

【クリエイティブエコノミー】

〔邦画2作品が米アカデミー賞を受賞した(11日)ことの受け止めと、日本のコンテンツ産業の発展について問われ、〕映画「君たちはどう生きるか」と「ゴジラ-1.0」が米アカデミー賞を受賞したことは大変喜ばしい。他方で、その吉報に先立ち、「DRAGON BALL」等の作者である鳥山明氏が亡くなられたことは非常にショックであり、心より哀悼の意を表する。これらの出来事に対する世界各国での報道ぶりを目にし、日本のコンテンツ、ソフトパワーの影響力の大きさを改めて実感した。

経団連は、2022年にクリエイティブエコノミー委員会を立ち上げ、諸活動を展開してきている。日本発コンテンツの海外市場規模の拡大を目指し、2033年に15~20兆円との目標に向けて取り組みを進めている。日本のコンテンツIP(知的財産権が認められているコンテンツ)の累積収入は、世界トップ25のうち12を占めているとのデータがあるが、戦略的に取り組んでいるとは言い難い。国策として進めてきた韓国の例も参考に、わが国のコンテンツ産業の振興に引き続き注力してまいりたい。

【旧朝鮮半島出身労働者問題】

〔韓国政府が旧朝鮮半島出身労働者問題解決のために設立した財団が、韓国企業からの寄付不足によりスキームの維持に支障をきたしかねない状況にあることについて問われ、〕韓国政府が解決策を発表(2023年3月)して以来、この1年で日韓関係は大きく前進した。首脳間のシャトル外交も再開され、計7回の首脳会談が行われてきている。来年は日韓国交正常化60周年の節目の年でもあり、さらなる関係改善が期待できる。

経団連もまた、韓国経済人協会(韓経協)とともに、「日韓・韓日未来パートナーシップ基金」を創設するなど両国関係の発展に努めており、この1年、一定の貢献ができたと感じている。本年1月に韓国の高校教師50名を招聘し、日本に対する理解を深めてもらい、年内に日本の高校教師を韓国に派遣する予定である。今後も、両国の若手人材交流やスタートアップ企業の交流などに取り組みたい。

現在、日韓関係は、官民ともにかつてない良好な関係にある。旧朝鮮半島出身労働者問題についても引き続き、韓国政府において、解決策に沿った適切な対応がなされていくものと期待している。

以上

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