1. トップ
  2. 会長コメント/スピーチ
  3. 記者会見における会長発言
  4. 経済三団体共催 2024年新年会後の共同会見における十倉会長発言要旨

会長コメント/スピーチ  記者会見における会長発言 経済三団体共催 2024年新年会後の共同会見における十倉会長発言要旨

2024年1月5
一般社団法人 日本経済団体連合会

【令和6年能登半島地震】

元日に発生した能登半島地震により多くの方々が亡くなった。謹んでお悔やみを申し上げる。被災された皆様に心よりお見舞い申し上げる。

今現在、地震や津波の心配が全くなくなったわけではなく、冬のさなか、不安な思いで避難生活を送られている方々も多数おられる。災害時の救命救助は、志と勇気を必要とする。この瞬間も、懸命な救命救助活動、安否不明者の探索、被災者への支援が行われており、関係者のご尽力に頭の下がる思いである。被災された方々が一刻も早く普段の生活を取り戻されることを切に願う。

岸田首相のもと、政府の支援が続いており、心強い。経済界も行動を起こしている。既にさまざまな企業が、物資の供給やインフラの復旧、生活サービスの維持、生活復旧支援などに取り組んでいる。引き続き、被災者、被災地の皆様に寄り添った支援を行っていく。

また、誠に遺憾ながら、去る1月2日、羽田空港における衝突事故で、被災地向け物資運搬に従事されていた海上保安庁の職員の方々が亡くなった。心から敬意と哀悼の誠を捧げる。

【日本経済】

〔2024年の日本経済について問われ、〕2024年は、日本経済がデフレからの完全脱却を果たすうえで、非常に重要な勝負の年である。実現に向けては、「成長と分配の好循環」を確かなものとする必要がある。千載一遇のチャンスを逃すことのないよう、構造的な賃金引上げの実現や、全世代型社会保障制度改革に全力で取り組んでいく。

日本の景気はコロナ禍の反動もあり、サービス業を中心に改善傾向にある。他方、世界経済は非常に予見可能性が低い状況にあり、その影響を受けやすい製造業の予測は難しい。

【金融政策】

〔日銀の金融政策の見直しについて問われ、〕日銀は、デマンドプル型の適度な物価上昇が実現し、賃金と物価の好循環がまわり始めたと判断できれば、金融政策の正常化に踏み切りたいと考えているのであろう。物価上昇がコストプッシュによるものかデマンドプルによるものかを見極めるのは難しいが、サービス業における価格と賃金の上昇は一つの判断軸になりうる。今年の春季労使交渉の集中回答日が一つのポイントとなるだろう。

為替は経済のファンダメンタルズを表すというが、今の円安傾向は果たして、日本経済のファンダメンタルズを正しく反映しているだろうか。実体経済とかけ離れた金融政策のもとでは、適切な為替水準が分からなくなる。こうした状況を踏まえれば、早ければ春にも金融政策が見直される可能性はあるが、日銀が適切な時期に判断するであろう。

【2024年春季労使交渉】

コストプッシュ型インフレであるとはいえ、長引くデフレを断ち切って物価が上がり始めたこの機を逃さず、構造的な賃金引上げを実現しなければならない。そのためには、2%程度の「適度な」物価上昇を実現したうえで、ベースアップと生産性向上分を合わせて物価上昇分以上の賃金引上げを目指すというサイクルを構築し継続していく必要がある。政府・日銀には、「適度な」物価上昇を実現すべく適切な政策を期待したい。

昨年の月例賃金の引上げ率は3.99%(大手企業、経団連調査)と約30年ぶりの高水準であった。まずは今年、そして来年以降も賃金引上げのモメンタムを維持・強化していきたい。

加えて、労働者の7割弱を雇用する中小企業の構造的な賃金引上げを可能とすべく、労務費を含めた価格転嫁が適切に行われる必要がある。経団連はこれまでも、「パートナーシップ構築宣言」の参画企業の拡大と実効性の確保に向けて働きかけてきた。「パートナーシップ構築宣言」の実践は、適切な価格転嫁の実行が重要との認識を、発注側だけでなく、受注側、ひいては社会全体にソーシャル・ノルム(社会的規範)として浸透していくことにつながる。参画する経団連会員企業数は増加している。会員全体で5割超、サプライチェーンの中核を成す、資本金100億円以上の企業で8割超、1,000億円以上の企業では9割超が宣言している。経団連は引き続き、「パートナーシップ構築宣言」への参画を呼びかけていくとともに、経団連の「企業行動憲章」の改定も検討していきたい。

【人手不足】

〔2024年の人手不足の状況・課題について問われ、〕労働力不足が原因で経済成長が阻害されるようなことはあってはならない。需給ギャップがほぼ解消されているなか、供給力の強化は喫緊の課題である。

労働力不足の解消に向けて、生成AIなどのデジタル技術による生産性の向上は不可欠である。中小企業へのデジタル技術の展開に対しては政府がしかるべく支援するなど、技術の進歩を社会全体でフル活用するべく官民連携で取り組みを進めていかなければならない。働き手を増やす観点では、女性や高齢者の労働参加を一層促すことも重要である。外国人労働者については、労働力が不足するからという理由だけで安易に受け入れるのは慎重であるべき。家族帯同の場合も含めて受け入れ体制を整備し、有為な人材が在留しやすくなる制度も必要だ。労働力不足の解消に向け、様々な政策を組み合わせて、官民連携で取り組むことが不可欠である。

【大阪・関西万博】

〔大阪・関西万博の会場建設に関して指摘されている人手不足や人件費の高騰が、令和6年能登半島地震からの復興に及ぼす影響について問われ、〕能登半島地震からの復旧・復興に向けてあらゆる資源を最優先でつぎ込み、被害に遭われた方々の日常生活を一日も早く取り戻さなければならない。

ただ、震災の復旧・復興と大阪・関西万博の準備は、二者択一で考えるべきものではない。コロナ禍や世界各地の紛争、さらには今回の震災により、国内外の多くの人々が、生命の尊さを実感している。分断傾向が著しい時代において、多様性を認め合い、連携することの大切さも身をもって感じている。大阪・関西万博は、まさに「いのち」をテーマとした意義深いものであり、多様性に満ちた世界を一つにつなげる意味合いも有している。大阪・関西万博もまた、是非とも成し遂げたい。

以上

「会長コメント/スピーチ」はこちら