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会長コメント/スピーチ  記者会見における会長発言 四国地域経済懇談会後の共同記者会見における十倉会長発言要旨

2023年12月6
一般社団法人 日本経済団体連合会

【四国経済】

全国的に、コストプッシュ型のインフレ、中国経済の停滞、欧米の中央銀行による金融引き締めなどの影響により、製造業の中には苦しい状況となっているところもある。他方、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の5類移行後、観光業やサービス業は活況を呈している。そうした傾向は、ここ四国でも同じではないか。

2025年には大阪・関西万博や瀬戸内国際芸術祭が控えている。ご当地は、四国遍路など観光資源において高いポテンシャルを有している。インバウンド需要を中心に四国の観光業が一層活性化することを期待している。

【四国新幹線】

〔四国新幹線の必要性や実現に向けた課題を問われ、〕四国は日本有数の観光地である瀬戸内を有しており、四国新幹線が開業すれば、観光振興などが期待できる。加えて、雇用創出や地域の防災力の向上といったメリットも得られる。新幹線開業の意義や経済波及効果を丁寧に、しっかりと説明することで地元の理解が醸成されることを期待したい。

【賃金引上げ】

〔地方の中小企業の賃金引上げについて問われ、〕経団連は、企業の社会的責務として賃金引上げを事あるごとに呼びかけてきた。その結果、今年の月例賃金の引上げ率は3.99%(大手企業、経団連集計)に達した。このモメンタムの継続が重要であり、来年は今年以上の熱量をもって賃金引上げに取り組んでいく。

社会全体で賃金引上げを実現するためには、中小企業や有期雇用等労働者の賃金引上げが重要である。そのためには、労働者の約7割を雇用し、地方に多い中小企業において、労務費を含めた価格転嫁が適切に行われる必要がある。そこで、「パートナーシップ構築宣言」の参画企業の拡大と実効性の確保に向け、経団連は取り組みを進めている。先般の政労使の意見交換(11月15日)でも議論の的となった。「パートナーシップ構築宣言」に参画する経団連会員企業数は増加している。全体では5割弱であるが、サプライチェーンの中核を成す、資本金100億円以上の企業の8割近く、時価総額ベースでは全会員企業の約9割が加わっている。価格転嫁が適切に行われることが重要との考えを、発注側だけでなく、受注側やこの考えに賛同する企業も含めて社会規範として浸透させていく必要がある。経団連は引き続き、「パートナーシップ構築宣言」への参画を呼びかけていく。

〔金属産業の5つの産業別労働組合から成る全日本金属産業労働組合協議会(金属労協)が、来年の春季労使交渉でのベースアップの統一要求額を今年の「月額6千円以上」から「月額1万円以上」に引上げる方針を固めたことの受け止めを問われ、〕月額1万円以上のベースアップは、賃金引上げ率3%程度に相当し、2%程度とされる定期昇給と合わせて約5%となり、連合の5%以上との要求方針と同義ではないか。昨今のコストプッシュ型の著しい物価上昇を踏まえれば、こうした要求引上げ自体は、労働運動として理解できる。

【少子高齢化・人手不足】

少子高齢化は日本社会が直面する最大の課題である。少子化対策として取り組むべき中長期的な課題は大きく三つある。第1に、結婚し、子どもを持つという若い世代の希望を叶えていくための所得環境改善である。第2に、国民の間に蔓延する漠然とした将来不安を払拭するための全世代型社会保障制度の構築である。第3に、性別を問わず仕事と育児の両立を可能とする働き方改革である。

〔人手不足が地域経済に与える影響について問われ、〕人手不足が地域経済に与える影響は深刻である。日商の調査によると、2023年度に賃金引上げを実施した中小企業は全体の約3分の2を占めるものの、そのうちの4割強は業績の改善がみられない中で人材確保などを目的にやむを得ず行った「防衛的な賃上げ」であった。労働力不足が経済成長を阻害するようなことがあってはならない。マクロ経済環境をみるに、需給ギャップはほぼ解消されている。政府が先般発表した総合経済対策では、とりわけ中小企業の供給力の強化が打ち出されている。引き続き、官民挙げて、日本全体で労働生産性の向上に取り組んでいく必要がある。

【社会保障改革】

〔政府が公表した全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋(改革工程)素案(12月5日)の受け止めを問われ、〕工程案で示された社会保障の歳出改革は、待ったなしの重要課題であり、速やかに進める必要がある。他方、現在の社会保障制度は65歳以上の人口比率が10%程度であった1960年代から80年代にかけて設計されたものである。少子高齢化が進展した今、そして未来においては、現役世代の負担が過度に偏重することとなる。歳出改革と同時並行で、中長期の視点から、全世代型社会保障の構築に向けたグランドデザインを描くことで、応能負担、給付と負担の適切なバランスを実現し、若い世代の将来への漠然とした不安を解消し、夢を持てるようにしなければならない。

【NTT法】

〔NTT法の見直しについて問われ、〕携帯電話等の急速かつ広範な普及などの情報通信技術をめぐる環境の変化を踏まえ、NTT法が現代に即したものとなるよう、必要な対応を行うべきである。その際、①事業者間の公正な競争環境、②わが国情報通信産業の国際競争力の強化、③経済安全保障、④ユニバーサルサービスの提供、の4点を確保することが不可欠である。その上で、NTT法を改正するのか、廃止するのか、といった判断は政府に帰するものであり、よく議論してほしい。

以上

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