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会長コメント/スピーチ  記者会見における会長発言 定例記者会見における十倉会長発言要旨

2023年10月25
一般社団法人 日本経済団体連合会

【訪欧ミッション】

10月15日から20日にかけて、安永副会長、東原副会長、髙島ヨーロッパ地域委員長、久保田副会長・事務総長らと欧州を訪問した。欧州委員会のドムブロウスキス上級副委員長、シムソン委員や、ドイツのハーベック副首相、シュミット首相府長官、ビジネスヨーロッパ、ドイツ産業連盟(BDI)をはじめ、官民の要人と政策対話を行った(計13件)。

一連の懇談を通じて、安全保障上の措置は自由貿易を前提に「スモールヤード・ハイフェンス」(限定された分野を厳重に管理)を原則とすること、経済的威圧を防止すべく、サプライチェーンの多角化に向けてEU、ドイツとの連携を強化することで意見が一致した。

脱炭素化に関しては、EUが2035年に新車販売を電気自動車に転換する方針を打ち出すなか、ドイツがE-fuel(合成燃料)車の販売継続といった現実的な施策を追求していることは印象深かった。

今般の訪欧ミッション、それに先立つ本年2月の訪米ミッション、4月のB7東京サミットの成果を踏まえ、官民での日米欧の連携、ならびにG7メンバーとの関係を一層強化していきたい。

【経済対策】

〔政府が検討中の経済対策、とりわけ所得税減税措置について問われ、〕マクロ経済環境を見るに、需給ギャップはほぼ解消されており、今必要な経済対策は大きく2つ。第1に、「供給力の強化」である。岸田総理が「供給力の強化」を掲げ、3年程度の変革期間で集中的に取り組むスタンスを明確に示されたことは心強い。第2に、急激な物価上昇局面において、真に必要な方々への支援が必要である。経済対策において、給付による支援策を講じることは時宜を得ている。

〔所得税減税の適否を問われ、〕今申し上げた2点に重点を置くとともに、構造的な賃金引上げの実現の好機を絶対に逃さないという強い熱意から、岸田総理は税収増の国民への還元策も視野に入れておられるのではないか。こうしたことを全て勘案すれば、(還元という方向は)評価してよいのではないか。与党税制調査会などの議論を見守りたい。

〔具体的な所得税減税措置として検討されている、1人当たり年4万円の定額減税の妥当性について問われ、〕(こういった場合は一般的に)定率減税よりは定額減税の方が適切であるし、金額についても、予算、真に必要な方への給付の額といったこととの兼ね合いで(、目安として)導き出されるものではないか。

【賃金引上げ】

〔連合が「2024年春季生活闘争方針基本構想」(10月19日公表)で、来年の賃金引上げ目標を昨年の「5%程度」から「5%以上」に高めたことについて問われ、〕連合の方針は、正式には12月1日に機関決定すると承知している。昨今の物価上昇を踏まえれば、労働運動として「5%以上」と表現を強めたこと自体は理解できる。

経団連は今年、賃金引上げのモメンタムの維持・強化、物価に負けない賃金引上げの継続的な実現を目指し、かつてない熱量で賃金引上げを呼びかけた。来年は今年以上の熱量をもって働きかけたい。物価だけでなく、人材の確保・定着や、分厚い中間層の形成など重視すべき考慮要素を示しながら、各企業に対し、自社に適した方法での賃金引上げをお願いしたい。

〔来年の賃金引上げ率の目標について問われ、〕数字ありきではない。中長期的に物価に負けない賃金引上げの継続、構造的な賃金引上げの実現が重要である。

〔中小企業の賃金引上げに必要な、取引価格の適正化について問われ、〕社会的な通念として、コスト増加分を取引価格に適切に転嫁する動きが定着し始めている。そのモメンタムを維持・強化し、中小企業の賃金引上げが進むよう、政府と経済界が取り組みを続けていかなければならない。その観点から、パートナーシップ構築宣言への参画企業を増やすことは重要である。経団連会員企業の約4割強が宣言している。裾野の広いサプライチェーンを持つ大企業にいたっては、大多数がすでに宣言している。引き続き、企業の意識や行動様式の変容を促し、参加を強く呼びかけていく。

【大阪・関西万博】

〔大阪・関西万博の会場建設費が従来計画の1,850億円から2,350億円に増額されることについて問われ、〕博覧会協会会長としては、非常に残念であり、建設費を正確に見通せなかったことを申し訳なく思う。ただし、昨今の人手不足や急激な円安の進展、輸入資材の高騰といった、やむを得ない事情もあった。万博を中止、ないし延期するのではなく、予定どおり開催する前提で、建設費の増額に見合う魅力の向上と、具体的な情報発信に努めていくことが基本である。報道機関にも是非、お力添えいただきたい。

正式に内容が固まった段階で、関西経済界とともに意見表明をする所存であるが、政府と大阪府・市、経済界で会場建設費を3分の1ずつ負担する原則のもと、負担増にも前向きに対応する必要があると考える。ありがたいことに、多くの企業から想定以上の寄付をいただいている。

〔さらなる増額の可能性について問われ、〕今回の500億円の増額は、2025年までの物価上昇も考慮したものである。現時点でさらに物価が高騰する可能性は高くないのではないか。

〔前売り入場券の企業による引き受けについて問われ、〕各地域の経済団体との懇談会などの機会をとらえ、経団連として、前売り入場券の購入を呼びかけている。未来を担う子どもたちに大勢来場してもらいたいという思いから、入場券の価格は大人の4分の1に設定している。引き続き工夫をこらし、アピールを続けてまいりたい。

【ジャパンモビリティショー】

〔モビリティショーへの期待、経団連の関わりを問われ、〕「モビリティ」は自動車だけでなく、他の移動手段や、移動時間・空間における人々の過ごし方といった広い概念を包含する言葉である。経団連のモビリティ委員会には、諸課題や取り組みについて幅広く議論すべく、自動車業界の枠を超えた様々な団体・企業が集っている。同委員会のメンバー企業約80社が「ジャパンモビリティショー2023」に協賛している。将来のモビリティ社会の姿が体感できることを楽しみにしている。

【国内総生産(GDP)】

〔日本のGDPがここ30年間伸び悩み、今年はドイツに抜かれる世界経済見通しが出たことについて、要因、受け止めを問われ、〕バブル崩壊後の「3つの過剰(債務、設備、雇用)」を背景に、日本企業が生存戦略として海外進出を加速し、GDPにカウントされない対外直接投資残高が増加したことが要因の一つに挙げられる。(ドイツに抜かれる見通しについては、)足元の円安(によるドル換算での目減り)ということもある。

こうした時期を経て、今、社会課題の解決を重視し、官民による国内投資の拡充を重視する「モダン・サプライサイド・エコノミクス」の考え方に立った諸施策を促進することが重要である。現在、デフレから(現在のコストプッシュ型インフレを経て)適度なインフレに移る好機を迎えており、国内投資促進策によって潜在成長率の上昇、GDPの向上につなげていく必要がある。正念場だ。

以上

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