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会長コメント/スピーチ  記者会見における会長発言 東北地方経済懇談会後の共同記者会見における十倉会長発言要旨

2023年9月22
一般社団法人 日本経済団体連合会

【東北地域における新産業創出】

東北大学が、国の認定する国際卓越研究大学の候補に選出されたことは誠に喜ばしい。大学の研究成果はもとより、地域住民や自治体、産業界、研究機関などの多様な主体との連携の実績や今後の計画が評価されたのではないか。理数系人材や注目度の高い自然科学系の論文の数が減少するなか、10兆円規模の大学ファンドも活用し、わが国の科学技術力の低下傾向を反転させなければならない。(選定プロセスが順調に進み、)早期に最終認定されることを期待している。

東北地域では、国際的な大型研究機関である「ILC(国際リニアコライダー)」の誘致や、次世代放射光施設「ナノテラス」の建設が進んでおり、国内外からの高いレベルの研究人材の集積が期待できる。また、日本のエネルギー分野の発展の鍵を握る核エネルギーに関し、青森県の六ヶ所村では、国際核融合エネルギー研究センターでの研究や、核燃料サイクルに不可欠な使用済燃料再処理工場の建設が行われている。このような、地域に根差したイノベーションの創出を一層期待する。東北大学には、その先導役を是非担っていただきたい。

〔「ナノテラス」を利用するコアリションへの参画企業が目標に満たない現状について問われ、〕わが国の勝ち筋は、科学技術立国、貿易立国の実現にあり、その一環として、「ナノテラス」について会員企業に周知していく。

【経済対策】

〔岸田政権が10月中の取りまとめを目指す経済対策について問われ、〕わが国は今、デフレ脱却、力強い経済成長ができるかどうかの正念場にある。政府と日銀は連携しつつ慎重に財政政策・金融政策を進めている。急激なエネルギー価格の高騰に対する時限的な措置に加え、構造的な賃金引上げに資する経済対策を強く求めたい。

【日銀金融政策】

〔日銀が金融政策決定会合(9月21、22日)で大規模金融緩和策の維持を決めたことについて問われ、〕わが国は本格的なデフレ脱却ができるかどうかの瀬戸際にある。米国、欧州もインフレ対応が難しい状況にある。こうしたなか、日米欧とも中央銀行は非常に注意深く舵取りを行ってきており、今回も、経済・物価動向を踏まえて慎重に判断を下したものと受け止めている。

【賃金引上げ】

今年の春季労使交渉では、物価高に負けない賃金引上げに向けて、過去に例のない高い熱量で呼びかけた結果、月例賃金の引上げ率は約30年ぶりの高水準となった。数字ありきの議論ではなく、来年以降も賃金引上げのモメンタムを維持・強化し、物価高に負けない賃金引上げを構造的・持続的に実現することが重要である。来年も同じ熱量で取り組みたい。

【ALPS処理水海洋放出】

IAEAの報告書(2023年7月公表)で指摘されているとおり、ALPS処理水の海洋放出は十分な安全性を有している。科学的、論理的、客観的な根拠、データに基づく安全性の高さについて、あらゆる機会をとらえて国内外に発信し続け、地元や国際社会の一層の安心確保につなげていく必要がある。インバウンドの急激な回復や、間近に迫る大阪・関西万博といった好機を活かし、経団連は引き続き、日本の水産物の美味しさ、安全性を積極的に内外に発信していく。

〔岸田総理が国連総会の一般討論演説でALPS処理水に言及しなかったことの受け止めを問われ、〕今回の演説は、(山積する地球規模の課題の克服に向けた)国際社会の連携・協調を呼びかけることに焦点が置かれていたと理解している。(ALPS処理水に関する国際社会への情報発信も各所で続けられており、)懸念を抱く一部の国との個別協議も行われていると承知している。時間を要するかもしれないが、様々な場で、科学的根拠に基づく丁寧で、粘り強い情報発信、説明、対話を続けていくことが重要である。

以上

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