一般社団法人 日本経済団体連合会
【日本経済、中国地方経済】
日本経済は、コロナ禍からの回復が遅れていたが、本年はリバウンドし、3%台前半の成長を遂げる見通しである。しかし、ロシアのウクライナ侵攻に伴い資源価格の高騰、物価上昇の加速が継続すれば、世界経済が失速し、日本経済の成長が下押しされる懸念がある。
中国地方は、瀬戸内をはじめ観光資源に恵まれており、これを活かした瀬戸内国際芸術祭も開催されている。しまなみ海道、やまなみ街道におけるサイクルツーリズム等もある。また、製造業を中心に、産学連携を通じてDX、GXに取り組んでいる。製造業と観光が経済を牽引する日本の縮図のような土地であり、今後の成長を期待している。
【賃金の引き上げ】
トヨタ自動車が、賃金引き上げに関して満額回答の意向を表明したとの報道があった。「賃金引き上げのモメンタムの維持」という経団連のメッセージに強い援護射撃をもらったと思っている。今年の春季労使交渉では、全国各地の企業で良い結果が得られることを期待している。
ステークホルダーキャピタリズムの時代にあって、重要なステークホルダーの一員である従業員に、賃金引き上げを通じて収益・利益を還元するのは、企業の責務である。他方、自由経済にあっては、賃金決定の大原則に則り、個々の企業が置かれている事業環境や財務体力等を踏まえ労使が良く話し合って賃金を決めるべきである。したがって、収益が増大した企業はできるだけ賃上げを行ってほしい。収益がまだ回復していない企業、収益が減少した企業は、中長期的にどのように従業員に報いるのかをよく検討してもらいたい。
加えて、日本の企業数の9割超、雇用者数の7割近くを占める中小企業における賃上げが非常に重要である。取引価格の適正化などを通じてサプライチェーン全体で生産性を向上し、賃金を引き上げることが大事であり、経団連は、政府の「パートナーシップ構築宣言」への参画を呼びかけている。
【ウクライナ情勢】
ここ何十年の間で最も大きな地政学的リスクが生じており、非常に憂慮している。短期的には資源価格の上昇を通じた経済への影響が考えられる。ロシア、ウクライナにおける企業マインドも委縮してくるのではないか。中長期的には、地政学的な影響もある。米国は、インド太平洋に軸足を置いて戦略資源を投下しようとしているが、これで二正面作戦を取らざるを得なくなるかもしれない。ジョンソン英首相も、ウクライナ問題は欧州の問題にとどまらず、台湾海峡にも影響が及ぶと言及している。ウクライナの問題が全世界に波及していくのではと憂慮している。
【経済安全保障】
ウクライナ情勢が緊迫する中、経済安保の重要性は増している。経済安全保障推進法の今国会での成立を目指す政府の方針を高く評価したい。企業の自由な経済活動は極力制約せず、予見可能性を高め、国際ルールとの整合性に配慮した内容となることを期待している。