一般社団法人 日本経済団体連合会
【健康状態】
治療は順調に進んでおり、最終段階にきている。まだ暫くオンラインによる記者会見となるがご理解いただきたい。
【「。新成長戦略」】
本日の会長・副会長会議で、「。新成長戦略」を審議し承認されたので、この場で公表する。成長に向けてやるべきことは変わっていないが、(1)スピード感をもった実行、(2)地球のサステイナビリティ(持続可能性)を根本に据えた点で、今回打ち出した成長戦略は従前のものとは大きく異なるものである。
企業は、その活動がサステイナブルで社会に貢献するものでなければ市場の支持を得られず、存続すら危うい。本編では、「サステイナブルな資本主義」の確立を基本コンセプトに据えた。その上で、(1)菅政権が一丁目一番地に据えており、民間としても加速していかなければならないDXを通じた新たな成長の実現、(2)時間による管理ではなく、新しい、やりがいを感じられる働き方の実現に向けた変革、(3)時間と空間の制約から自由になった人材による地方創生、(4)米国をはじめとする諸外国の変化を踏まえた国際経済秩序の再構築、(5)菅首相が施政方針演説で明確に打ち出した2050年カーボンニュートラルに向けたグリーン成長の実現、の5つのターゲットを掲げ、2030年までの達成に必要なアクションを整理している。
女性の活躍はダイバーシティ・アンド・インクルージョンの観点からも重要だが、今の日本の社会構造においては、明確な目標を設定しないと現実的に進みにくい。そこで、高い目標を設定して、それに向かって努力しようということで、役員の女性比率を2030年までに30%超とするという、具体的な目標値を定めた。
また、この10年間、日本で原子力に関する議論ができないでいる間、世界の状況は大きく変わった。大型炉の安全対策が厳しくなりコストが上昇したことから、小型炉の開発が進められてきた。今や世界で大型炉の建設は中国とロシア両国が主導しており、安全保障上の懸念も出てきている。こうした現状も認識した上で、わが国が世界で果たすべき役割、グリーン成長実現等について根本的な議論を行う必要がある。
いずれにせよ、この成長戦略で示した課題に対し、今後、経済界自らがしっかりと取り組むとともに、政府・与党に強く働きかけていく。
【米国新政権への期待】
バイデンさんは、同盟国との協調を重視する姿勢を示すなど、従来の米国の基本的な考え方を踏襲している。他方、対中政策に関しても、トランプ大統領とは異なるアプローチをとるものと考えられる。わが国の政府・経済界は、新政権と新たな関係を多面的に構築していく必要がある。
【エネルギー政策】
菅総理は所信表明演説で2050年カーボンニュートラルを目指すことを宣言され、新たな成長戦略の柱に位置付けることとされた。わが国のエネルギー政策を進める上での出発点、目標がしっかりと示されたのは心強い。
他方、日本のエネルギー事情は大変厳しい状況にある。電力会社は、原子力発電所の安全対策コストが嵩んだこともあり、ここ10年間、電力に関するそれ以外の新たな投資をほとんど行えていない。技術開発やイノベーションを誘発し、新しい電力・エネルギーのスキームを構築するためには、投資が促進される仕組みをつくらなければならない。
【投資すべき分野】
経営の基本方針から一歩進めて、新たな商品・サービス開発に結び付くような、DX関連の投資、すなわちデジタル化やデータの利活用に関する投資が重要である。
こうした分野への投資を進める上で、最も大事なのは人材である。良いものをつくれば売れた時代とは違う、知恵、工夫を働かせてデータを活用したサービスで利益を上げつつ社会にも貢献できる人材が求められる。すでに多くの企業がこの面での人材投資に一歩踏み出しているが、それを加速する政策も重要である。
【2020年度第3次補正予算】
コロナ対策として、雇用調整助成金の特例措置をはじめ、財政支出を永遠に続けることは不可能である。いずれ日本の財政健全化に向けて、真正面から議論する必要がある。
【日本学術会議のあり方】
日本学術会議について、コメントは差し控えたい。