一般社団法人 日本経済団体連合会
【西日本を中心とする豪雨被害】
先週末からの西日本を中心とする豪雨により、100人を超える方が犠牲になられた。亡くなられた方々にお悔やみ申し上げるとともに、被害にあわれた方々にお見舞い申し上げる。経団連としても、1%クラブを通じて、会員企業に支援を呼びかけていく。経済への影響については、まだ全容は明らかになっていないが、インフラ面では通信や電力への被害に加えて、広島空港が孤立した。また、自動車販売店では新車が浸水した。こうした被害を考えると、被害額は相当な金額になるのではないか。
東日本大震災を契機に、各社においてBCPの策定が進んでいる。BCPは自然災害のみならず、ありとあらゆる事態を想定し、事業継続の方策をまとめたものである。被災したサプライチェーンの復旧をはじめ、幅広い対策・取り組みが網羅されている。今回の水害に対しても、事業全体が継続できるよう、各社でBCPに基づきできる限りの取り組みを進めていくことを期待したい。
【未来社会協創会議】
本日、経団連の最重要課題であるSociety 5.0の実現に向けて、未来社会協創会議とその下部組織であるタスクフォースを設立した。Society 5.0を具体化していくためには、従来のように分野ごとに委員会単位で検討していては、新しい社会づくりというところまではなかなか到達しない。Society 5.0がどのような姿になるのか、横断的に、かつより高いレベルで議論しながら、踏み込んだ形での提言を行うなど、活動を展開していく。デジタル化というと技術に焦点があたりがちだが、社会の仕組みそのものが変わるという認識の下、幅広い議論をしていく必要がある。さまざまな課題を乗り越えながら、安心安全な新しい社会の姿を示していきたい。
具体的には、データの共有・活用が鍵となる。データは資産であり、共有という段階までは進んでも、そこから先のデータの活用のあり方を巡って、課題に直面している。データの共有、保護といった面でのルール作り、即ち、どういった共通理解の下でデータを運用・活用していくかが大きな課題となる。
【SDGs】
企業活動がどのようにSDGsに貢献しているのかを明示する目的で、このたび事例集を公表し、特設ウェブサイトを開設する。会員各社から約170の事例がすでに集まっている。また、Society 5.0を通じて経団連がどのようにSDGsに貢献しているかを整理した小冊子も作成した。こうした事例集・小冊子を活用して、7月に開催される「持続可能な開発のための国連ハイレベル政治フォーラム」などの場において、経団連の取り組みをアピールしたい。
【米国通商法232条への対応】
通商拡大法232条に基づく自動車等の輸入に関する調査について、経団連から米国商務省に意見を提出した。公聴会にもエントリーしており、招かれればしっかり意見陳述したい。追加関税が課されるようなことになれば、幅広い影響があると懸念している。今回のパブリックコメントにとどまらず、各州への働きかけなど様々な活動を展開していく。
商務省に提出した意見書では、日本企業が投資を通じて、雇用の拡大など米国経済の発展に貢献している点を指摘している。これはかねてより経団連が訪米ミッション等で主張してきたことである。また、追加関税を課すことになれば、日本企業のみならず、米国の消費者も価格上昇などにより大きな影響を受けることになる。日系自動車ディーラーの経営、生活にも直結する。米国商務省の統計に基づいたデータを盛り込みながら、かなり強い表現を用いて、米国経済に深刻な影響をもたらすことへの懸念を表明した。さらに、一方的措置は予見可能性を低下させ、企業の投資意欲の減退にもつながりかねないという点にも言及している。そもそも、通商拡大法232条は安全保障に関する条項である。日本の自動車が米国の安全保障にどのように影響するのか理解に苦しむところもある。今回のパブリックコメントでは、この点にも触れている。
【日EU EPA】
日EU EPAには高水準の内容が規定されており、これが署名されることになれば大変意義深い。世界に対して自由貿易を推進していく姿勢を示すことは重要である。昨年は通商政策の面で大きな成果があった年である。TPP11が大筋合意され、日EU EPA交渉が妥結した。今年に入ってからも、RCEPを巡って、具体化の動きが見られ、年内の大筋合意といった話も聞かれるようになっている。2017年に続いて、2018年も自由貿易に関する国際的な枠組みづくりに日本が力を発揮し、国際社会をリードする年になれば、素晴らしいことである。
今、世界はデジタル化に対応した新しいルールを必要としている。この点、知的財産をいかに活用していくか、そのためにどのように競争しつつ協力していくかという方向性がTPP11、日EU EPAの中に盛り込まれており、大きな進歩である。これらが次世代の秩序づくりの契機となることを期待している。
【品質管理問題】
日産自動車が排出ガス測定に関する不適切な対応を公表した。詳細については確認中であるが、昨年来、企業の品質問題が続いていることを深刻に受け止めており、経団連としてもこの問題に地道に取り組んでいく。
品質管理問題については、現場の問題に過ぎないという認識をすべきではなく、経営課題として捉えるべきである。現場の状況をきちんと把握しなければ真の経営とは言えない。その意味で、品質管理問題は永遠の経営課題であり、経営がきちんと現場の状況を確認しなければならない。