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会長コメント/スピーチ  記者会見における会長発言 記者会見における榊原会長発言要旨

2018年4月9日
一般社団法人 日本経済団体連合会

【通商問題】

米中両国が通商問題に関して、相互に措置を公表している。米国の通商法301条に基づく関税の引き上げに対し中国が対抗措置をとることは想定されていたことであり、驚きはないが、米国、中国のみならず、世界経済全体に影響が及ぶことを懸念している。米国、中国ともにそのことをよく理解していると思うので、対話を通じた解決を期待している。今の状況をあまり悲観的、断定的に考えずに、引き続き動向を注視していく。

先週、カナダで開催されたB7サミットでも通商問題について議論し、B7として世界経済への影響に対する懸念を表明した。共同宣言を取りまとめ、カナダのシャンパーニュ国際貿易大臣に手交した。

米国の通商拡大法232条に基づく鉄鋼・アルミへの関税措置は、問題の根本的な解決にはならない。問題の本質は過剰生産能力であり、国有企業の行動や国による補助金などである。こうした本質的な問題については、OECD、WTO、G7、G20などの国際枠組みにおける議論を通じて、ルールに基づいて対処していくこと、公平な競争条件を確保することが重要である。日本が関税措置の対象から外れるか否かも勿論、大事ではあるが、本質的には、一方的な措置ではなく、国際協調によるルールに基づいた問題解決を呼びかけていくことが重要である。

4月中旬には日米首脳会談が予定されている。日本をはじめ各国が抱く通商問題に関する懸念、ルールに基づいた自由で開かれた国際経済秩序の重要性、大国としての米国の責任・役割を安倍総理からトランプ大統領に直接話していただきたい。

【黒田日銀総裁二期目への期待】

黒田総裁は2013年の就任以来、一貫して2%の物価目標の達成に向けた金融政策を掲げ、実現に取り組んできた。その結果、物価が持続的に下がり続けるという意味でのデフレではなくなっている。この点を評価しており、これまでの日銀の金融政策を支持している。黒田総裁が二期目に入られることは、金融政策の継続性という観点から望ましいことである。

二期目の最大の課題は、デフレ脱却・経済再生である。黒田総裁の就任から5年が経過し、デフレではない状態になったものの、デフレ脱却宣言までには至っていない。この目標達成に向け、引き続き適切な金融政策を実行してもらいたい。

出口戦略も重要な課題であるが、今はこれを議論する段階ではなく、2%の物価目標を達成することが大事である。黒田総裁自身も言及されているし、当然、日銀の中でも様々な場面を想定した議論をしていると思う。ただ、時期を含め具体的なところまで踏み込む段階ではないのではないか。現実的には、現在の金融政策を継続し、デフレ脱却・経済再生を目指すものと承知している。

今の金融政策に、財政規律の緩みやマイナス金利の銀行業績への影響など副作用がないわけではない。財政健全化はわが国にとって、デフレ脱却・経済再生とならぶ重要課題である。全体的に見れば、デフレ脱却が最優先課題である。副作用は副作用として、デフレ脱却を最優先課題に掲げ、そのための金融政策を推進してきた。この路線を支持している。

【働き方改革】

働き方改革を推進していくためには、裁量労働制の拡大、高度プロフェッショナル制度の創設、同一労働同一賃金、残業時間の上限規制の4つの政策課題すべてを実現していくことが重要である。今回、働き方改革関連法案から裁量労働制の対象拡大が除外されたことは残念であるが、残る3つの課題については、今国会で早急かつ確実に法案を成立させ、実現してほしい。裁量労働制の対象拡大については、様々な課題が指摘されていることから、しっかり実態調査を行ったうえで、改めて早期に国会に提出してほしい。

先週、働き方改革関連法案が閣議決定され、国会に提出されたことは働き方改革の推進に向けた第一歩であり、与野党には早急に建設的な議論を行うよう期待したい。とりわけ、高度プロフェッショナル制度の創設は、時間ではなく成果で評価する新たな働き方を導入するものであり、これを確実に実現することが働き方改革を推進するうえで重要である。

【行政府を巡る諸課題】

森友学園の問題、自衛隊の日報問題は重要であり、これらをないがしろにしてはならない。とりわけ自衛隊の日報問題は文民統制に係ることであり、看過できないことだ。自衛隊の最高指揮官である安倍総理が先頭に立って、事実の調査を徹底して行い、再発防止に取り組み、厳正に措置してもらいたい。

昨今の財務省、防衛省、文部科学省、厚生労働省を巡る問題を見ていると、国家公務員としての基本的な心構え、矜持が浸透しているのか疑問視せざるを得ない。勤勉な国民と優秀で実直な公務員が日本の経済発展を支えてきたが、昨今の状況を見るに、違ってきているのかと感じざるを得ない。公務員としての基本的な姿勢や立ち居振る舞いを正していくことが必要である。森友問題をはじめ行政府を巡る諸問題について国民が納得できる形で早期に解決し、山積する重要政策課題の解決に全力であたってもらいたい。

【顧問・相談役】

昨今、社長・会長経験者が退任後、相談役や顧問として会社に残ることを問題視する向きもあるが、わが国では、企業経営の経験者がこれまでの経験を活かして、さまざまな面で社会に貢献し、日本の社会を円滑に機能させるために必要な役割を担っている。相談役・顧問についても、経済団体や事業者団体の活動などにおいて重要な機能を担ってきた。「相談役」「顧問」という役職名だけで一概に決め付けるのではなく、社会貢献の観点からつぶさに検証することが必要だ。もっとも、顧問・相談役が何人いて、どのような役割を有しているかをきちんと公開し、透明性を確保していくことは当然である。

【北朝鮮を巡る情勢】

この1、2カ月の間、北朝鮮が各国との対話に動いていることを注視している。大事なことは北朝鮮が現実に、間違いなく非核化に取り組み、それを国際社会がどのように監視し、実現まで見届けるのかということである。安易な憶測や推測は慎むべきである。今後、4月27日の南北首脳会談に続き、5月末までには米朝首脳会談が開催される予定である。こうした中、4月中旬という重要なタイミングで日米首脳会談が開催される。日本政府には、米国をはじめとする関係各国と連携し、北朝鮮の非核化と拉致問題の解決に向けて万全の対応をとってほしい。とりわけ、日米が緊密な連携をとることが、北東アジアの安定にとって重要であると強く訴えてほしい。日本外交が蚊帳の外に置かれているということはなく、当事国との間で様々なレベルの対話が進んでいると思う。安倍総理には引き続き、日米首脳会談をはじめ外交の場で重要な役割を果たしていくことを期待している。

以上

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