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会長コメント/スピーチ  記者会見における会長発言 九州経済懇談会後の共同記者会見における榊原会長発言要旨

2018年3月7日
一般社団法人 日本経済団体連合会

【地方創生】

地域経済活性化委員会の活動は、経団連が重点を置くものの一つである。その柱の一つは、10項目から構成される「地方創生に向けた経団連アクションプログラム」である。具体的には、企業の地方拠点の強化、大企業人材の地方への還流の促進、地方採用の拡大、地方での起業の促進、異業種連携の推進、経済界と農業界との連携プロジェクトの創出、経団連観光インターンシップの地方大学への展開などに取り組んでいる。

また、経団連会長に就任して以来、地方経済団体との交流強化を重要課題の一つに位置づけ、活動を展開してきた。日本各地で開催する経済懇談会でも連携は年々強まっており、各地域が抱える課題について踏み込んだ議論を行うことができるようになってきている。双方の知見や情報を提供し合うということにとどまらない。各地域の生の声を経団連の提言活動に反映させることにもつながっている。地方経済団体との交流を通じて、各地の経済団体が進める地域経済活性化に向けた取り組みを引き続き後押ししていく。

さらに、北陸経済連合会、四国経済連合会、北海道経済連合会と連携協定を締結し、経団連会員企業と地域の企業とのビジネスマッチングを進めている。北陸の企業・大学とは9件、四国の企業とは2件、具体的な協議を進めており、成果も上がりつつある。

こうした取組みを継続的に進めていくことが、地方創生に向けた経団連の具体的な役割だと考えている。

【九州経済】

九州経済の稼ぐ力の典型例として、農水産品の輸出拡大とインバウンドの拡大が挙げられる。これらの成果は、九経連の麻生会長のリーダーシップによるものである。農水産品の輸出については、九州農水産物直販株式会社が、香港、シンガポールへも販路を拡大している。同社では、2020年に農水産品輸出額20億円を達成するという目標に向け取り組みを強化しており、経団連会員企業もこの支援に参画している。九州へのインバウンドもここ数年30%超の伸びを続けており、ここ3年では2倍に増えている。こうした課題や施策について、本日の経済懇談会での意見交換がいささかなりとも貢献できて、九州経済の活性化につながればと思っている。

経団連会長として4度目の九州経済懇談会となったが、年を経るごとに、より踏み込んだ議論ができるようになってきたと感じている。経団連と九経連の絆も一層深まっている。経団連としても九州経済の発展に向けて一層貢献していきたい。

【採用選考活動】

経団連ではすでに、2019年度入社対象まで採用選考活動のスケジュールを決定し、公表している。他方、2020年度以降入社対象のスケジュールについては未定である。3月12日の会長・副会長会議で、いくつかの選択肢をベースに議論することにしている。とりわけ2021年度入社の学生が就職活動を行う2020年は、東京オリンピック・パラリンピックの年にあたる。セミナー会場となり得る都内の大規模施設の多くがすでに予約・占有され、これまで通りには活動ができないという特殊な事情もある。この点も含めて議論したい。2021年度入社対象のスケジュールは全くの白紙である。

2020年度入社対象の指針について、機関決定はこれからだが、現行スケジュールを踏襲するのが自然な流れであると思う。現行のスケジュールを巡り、色々な意見があることは承知しているが、政府、大学、経済界から一定の支持を得ており、新しい秩序となりつつある。3月12日の会長・副会長会議で議論したうえで、2020年度入社対象の指針について早期に公表したい。

そもそも、採用選考活動のスケジュールを変更した背景には、政府、大学からの要請があった。とりわけ、大学側から学生を3年生の間は勉学に集中させたいと要請されたことに留意したい。これに応える形で企業は、大学3年生の3月より前は、採用選考活動を行わないようにしている。

【鉄鋼とアルミに対する米国の輸入制限】

トランプ大統領は、鉄鋼とアルミに高い関税を課す内容の輸入制限を発動する方針を示しているが、米国議会においてもこれに懸念を示す向きがあると承知している。コーン国家経済会議委員長が退任の意向を示したとの報道もあり、保護貿易的な動きに対して、米国内でも様々な声があると思う。今週、トランプ大統領が発言通りの形で措置を決定するのかどうか注意深く見守りたい。

仮にこれまでの発言通りの形で発動されれば、すでに各国が表明しているように対抗措置が採られる可能性がある。そうなれば、鉄鋼やアルミだけでなく他の製品にも波及して負の連鎖が起き、貿易戦争のような事態になりかねない。世界経済へも少なからぬ影響を及ぼしうるだろう。自由貿易を守るという立場から、トランプ大統領の再考を期待したい。日本政府にも、各国政府と連携しトランプ大統領に再考を促すよう働きかけてほしい。報道で予測されているような好ましからざる事態を回避する形で収まることを期待している。

【森友学園を巡る問題】

一般論として、本件に限らず、行政においては国民の理解を得ることが大前提である。国民が疑念を抱くようなことがあれば、国会の場できちんと説明することが必要であろう。国会の場できちんとした対応がなされることを期待したい。

他方、わが国を取り巻く状況を見れば、経済界として重視するデフレ脱却・経済再生、また、北朝鮮問題等の緊迫した国際情勢など、重要課題が山積している。こうした重要政策課題を横において、森友問題だけに国会での議論が集中することは、国民の立場から言えば、望ましいことではない。国会の場で、重要政策課題についての議論が進むことを期待したい。

以上

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