一般社団法人 日本経済団体連合会
【九州北部豪雨】
九州北部豪雨で犠牲になられた方々に哀悼の意を表したい。また、被害を受け不自由な生活を余儀なくされている被災地の皆さまにお見舞い申し上げる。現地では、道路網の寸断や物流・配送の遅延などが発生しているが、消防、警察、自衛隊、また地元企業の方々が昼夜を問わず救命、復旧活動に尽力されている。まだ、被害の全容が把握できておらず、経済被害の規模も発表されていない段階であるが、一刻も早い復旧ならびに経済活動の回復を心より願っているところである。経団連は1%クラブを通じて、会員企業・団体に対し、義援金・支援金等の寄付を呼びかけた。引き続き、関係組織との連携をとりながら、必要な対応に取り組んでいく。
【消費増税】
2019年10月に10%に消費税率を引き上げることは政権の公約であり、国際社会との約束でもある。すでに二度延期しており、三度目の延期という選択肢はない。経済界としては、是が非でも消費税率を計画通り引き上げるべきであると主張していく。財政制度等審議会の会長も兼務しており、国の財政規律の確保、とりわけ2020年度のPB黒字化に向けて、2019年10月の消費税率10%への引上げは絶対に必要と考えている。
税率を上げて喜ぶ方はまずおらず、低い方が良いと思うのが人の情であろう。しかし、今の国の財政状況や少子高齢化の現状をきちんと説明すれば、国民の理解は得られると思う。国民に反対されることを懸念し消費増税を先延ばしにすることがあってはならない。高齢化社会において社会保障を維持させるためには消費税を増税する必要があることを国民に丁寧に説明していけば、納得が得られるし、国民の支持にもつながると思う。
【教育問題】
高等教育の無償化について、大学進学希望者全員を対象に無償化することは大学の質の低下につながりかねない。大学に行きたくても行けない人への給付型奨学金や所得連動型返還奨学金を用意するべきである。また、財源に限りがある中、むしろ、子ども・子育て支援に重点的に取り組むべきである。その際、国全体で支えるという観点から、税財源で対応するべきである。
【G20】
先のG7サミットに続いて、今回のG20でも、首脳宣言に保護主義と闘う旨が明記されたことを評価したい。具体的には、「すべての不公正な貿易慣行を含む保護主義と引き続き闘う」という文言が盛り込まれ、G7での自由貿易推進の基調が維持されたと評価している。
【日中・日韓関係】
G20に際して、安倍総理と文在寅大統領との間で日韓首脳会談が開催された。未来志向の日韓関係の構築に向けて、シャトル外交の再開が合意されるなどの成果もあり、極めて意義深い会談であったと思う。
また、日中首脳会談も開催された。和やかな雰囲気の中で行われたようであり、両国関係は改善の方向に向かっている。私も5月には習近平国家主席、6月には汪洋副総理と会談する機会を得たが、日中関係は確実に改善していると実感した。今回の首脳会談の中で、安倍総理は一帯一路構想への協力を表明した。同構想が地域と世界の平和と繁栄に貢献していくこと、また、保護主義やナショナリズムの台頭が懸念される中、貿易投資の自由化・円滑化、インフラの連結性向上につながることへの期待感が示されたと受け止めている。日本の経済界としても一帯一路に協力していきたいと考えており、とりわけインフラの連結性向上について、日本企業の関心は高い。経団連が一昨年より開催している日中企業家及び元政府高官対話(日中CEO等サミット)においても、一帯一路について、両国企業による協力の可能性が議論されている。ただ、一帯一路には、不明な点が多いことも確かであり、さまざまな機会を捉えて具体的な内容の把握に努めていくことも必要である。
【憲法問題】
安倍政権発足以来、経済最優先で、しっかり成果も出している。この初志を貫徹することが重要であり、引き続き経済最優先で政権運営を行っていただきたい。一方、憲法改正について、議論の必要性を感じている。ただ、政策遂行の優先順位は経済があくまでも先である。また、改憲論議は国民の支持と理解が前提となる。経済政策をしっかりと実行する中で、改憲に向けた環境も整ってくるのではないか。
【政治情勢】
来月上旬に内閣改造・自民党役員人事が予定されているようだが、人事は安倍総理の専権事項である。ただ、先の都議選での厳しい結果、また、世論調査で政権への支持率が低下し、不支持率が上昇している背景には、政権に緩みや驕りがあったのではないかとの指摘もある。経済界としては、国民の間に政党不信、政治不信が広がることを懸念しており、政府・与党には現状を真摯に受け止めてほしい。
政権運営を進める上で、国民の支持と信頼を得ることは極めて重要である。内閣改造への国民の関心は高い。足元の経済情勢を見ると、GDPが5四半期連続でプラス成長となっているが、動きは依然緩やかであり、消費も未だ力強さを取り戻していない状況である。政権運営にあたり、経済再生、デフレ脱却という第2次安倍政権発足以来の初心を忘れることなく、経済最優先で取り組んでほしい。そうした姿勢で強力に政策を推し進めれば、国民の信頼が高まっていくと期待している。