一般社団法人 日本経済団体連合会
【副会長人事】
本日の会長・副会長会議にて、新たに選任される副会長の候補者を内定した。5月9日の理事会を経て、6月2日の定時総会に諮り決定する。定時総会をもって現在14名の副会長の内、荻田伍 副会長、石原邦夫 副会長の2名が任期満了により退任し、その後任として岡本毅 東京ガス会長、小林健 三菱商事社長、石塚邦雄 三越伊勢丹ホールディングス会長、國部毅 三井住友銀行頭取の4名が就任する予定である。6月2日以降、16名の副会長の体制で経団連活動を推進していく。
東京ガスと三越伊勢丹ホールディングスからの副会長就任は初めてである。東京ガスは地域のガス供給にとどまらず、電力やエネルギー関連分野でも事業を進めている。また、海外インフラ需要への対応やエネルギー資源の調達などグローバルにビジネスを展開している。こうした分野での発信力の強化に期待している。三越伊勢丹ホールディングスについては、日本経済の再生に向けて、個人消費の拡大とその一環としてのインバウンドの拡大が重要テーマであり、この分野での高い発信力に期待している。三菱商事、三井住友銀行については、これまでも副会長を輩出してきた企業である。現在、商社からの副会長は三井物産のみだが、2人体制として、この分野の強化を狙ったものである。銀行についても同様に2名体制とする。2016年はデフレ脱却・経済再生の正念場の年であり、色々な観点から最強の布陣を構えて、経団連の体制を一層強化し、活動を活性化させていく。
【マイナス金利】
マイナス金利は企業と国民のデフレマインドを是正するための措置だと理解している。実際、デフレ脱却に向けた下支え的な効果がある。マイナス金利が導入されていなければ、株価はもっと下がっていたかもしれない。
デフレ脱却と経済再生は日本経済の最重要課題であり、政・官・民があらゆる政策や手段を総動員しなければならない。企業としても、積極経営を通じて設備投資、賃金引上げに積極的に取り組んでおり、日銀は採り得る政策をタイムリーに打ち出したと評価している。
【実質賃金】
大企業、中小企業ともに2年続けて高水準の賃金引き上げを実施してきたが、厚生労働省の毎月勤労統計調査では、実質賃金が4年連続のマイナスとなった。その背景には、60才定年制の企業で再雇用された社員が増えており、その給与水準が下がることがある。また、こうした企業の新入社員の給与水準は、定年を迎える社員に比べて低いため、企業の給与総額が減少する場合もある。こうした状況が統計上の数字に影響しているとの指摘もあり、よく検証していく必要がある。
【同一労働・同一賃金】
日本型の賃金制度は、仕事の内容だけでなく、個々人への期待役割や責任、人材活用の仕組みを考慮しながら設計され、バランスのとれた処遇を行っている。安倍総理が同一労働・同一賃金の実現に踏み込む考えを示したことで、公平・公正な処遇に関する企業の取り組みを後押しすることを期待している。今後、一億総活躍プランの中で、具体的な検討がなされると承知しているが、将来的な人材活用の要素も十分考慮して処遇を行っている実態を踏まえながら、議論を行っていくことが重要である。
【地方法人課税の偏在是正】
政府が進める地方法人課税の偏在是正は、国税である地方法人税と地方税である法人住民税の比率を変更するものと理解している。具体的には、国がプールし再配分する原資を拡大するため、国税分を増やし、見合いで地方税分を減らすものである。現在の地方法人課税は偏在度が高く、アンバランスが大きい。経団連は、従来より法人住民税は全額国税にし、再配分すべきと主張しており、政府が進める改革の方向と軌を一にしている。全体のバランスを適正化するとの判断の下、偏在是正が進められていると理解している。
【技術の海外流出】
一般論として、国内の重要な技術が安易に国外に流出しないようにする必要がある。米国ではエクソン・フロリオ条項により、安全保障の観点から外国企業による企業買収を規制している。わが国においても何らかの歯止めは必要であり、機微な技術はきちんと守らなければならない。外為法による規制はあるものの、その対象範囲を見直す必要があると思う。
【政治資金】
民主政治、議会制民主主義を適切に維持していくためには、相応のコストが必要であり、企業が社会貢献の一環として行う政治寄付は重要である。政治寄付は、透明性が高く、クリーンな形で行われることが大前提であり、経団連が呼びかける政党本部への寄付は最もクリーンで、透明性のある形で行っているものであり、これは継続されるべきものである。
政党の政治資金において、最も重視すべきは党費、事業収入であり、寄付はこれらに準じるものとして、また公的助成はこれらを補完するものとして位置づけるべきである。公的助成があるからといって、政治寄付をなくして良いということにはならない。
【衆議院選挙制度改革】
衆議院議員選挙について、最高裁判所が「違憲状態」との判断を示しており、これを早急に是正すべきである。すでに衆議院議長の諮問による選挙制度調査会が答申を出しており、その趣旨を踏まえてきちんと国会で議論し、方向性を出してほしい。一方で、国会議員数については、答申でも指摘されているように、人口当たりの議員数は国際的に見て、特別に多いというわけではない。議員定数そのものは総合的に判断すべきである。
【北朝鮮によるミサイル発射問題】
北朝鮮によるミサイル発射は、国際社会、特に北東アジアの安全保障にとって大きな脅威となるものであり、誠に遺憾である。国際社会が制止するよう働きかけてきた中でのこうした行動はまったく理解できない。安部総理は国連による制裁、日本独自の制裁を強化するという姿勢を明確に打ち出しており、速やかに発信してほしい。
北朝鮮を含めた東アジア情勢や南沙諸島などの地政学リスクはすでに顕在化しており、今回のミサイル発射問題そのものが経済へ直接影響することはないだろう。