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会長コメント/スピーチ  記者会見における会長発言 経済三団体共催新年祝賀パーティー後の共同会見における榊原会長発言要旨

2016年1月5日
一般社団法人 日本経済団体連合会

【景気認識】

世界経済を俯瞰すると、2016年も中国を含むアジアが世界経済の成長センターとなる。アジアに加えて、米国が世界経済の牽引役になると思う。米国は昨年末、9年ぶりとなる利上げを実施したが、これは米国経済の強さを示すものである。雇用や所得の環境、エネルギー価格の低下、個人消費の強さを踏まえれば、2%台後半の経済成長を実現すると思う。また、欧州経済も緩やかに回復していく。エネルギー安や雇用環境の改善を受けた個人消費の拡大、ユーロ安による輸出の増加など経済は堅調に推移していくだろう。中国経済は成長ペースが減速しているが、金融緩和、財政支出の拡大、構造改革などの景気刺激策・経済対策によりニューノーマル(新常態)の中での6.5%以上の経済成長を続けていくと見ている。これらを踏まえれば、世界経済全体では3%台半ば程度の経済成長を実現できると思う。

日本経済については、アベノミクスが4年目に入り、着実にその効果が表れてきている。円安、エネルギー安を受け、企業業績は好調を維持しており、今年度末には昨年度を上回ることが期待される。また、昨年はTPPの大筋合意、原発の再稼働、法人実効税率の引き下げ、COP21におけるパリ協定の採択など様々な構造改革が実現した。六重苦と言われた事業環境も整備されつつあり、今年は昨年を上回る経済成長が期待できる。政府も今年の経済成長率を実質1.7%、名目3.1%と見込んでおり、これは必ず実行すべきであるし、実行できると思う。

株価については、年明けから下落しているが、これは中国経済の減速懸念や緊迫する中東情勢を受けたものだと思う。ただ、今の株価の下落をもって、世界経済のファンダメンタルズは大きく毀損しているとは言えない。一時的な動きであろう。日本の株価は好調な企業業績を反映して2万円台を回復すると見ており、日本経済のファンダメンタルズにはそれだけの力があると思う。

世界経済のリスク要因については、米国の利上げが新興国経済に影響を及ぼすとの懸念はあるものの、利上げの時期、規模ともに想定されたものであり、マイナスの影響は限定的になるだろう。米国の利上げは大きなリスク要因とは見ていない。

中国経済の減速についても悲観視しておらず、2020年に向けて中高速成長を維持していくと思う。昨年の日中経協訪中団で李克強総理と会談し、中国経済の見通しについて直接はっきりとした考えを聞いた。李首相は、第13次5ヵ年計画の下で構造改革を進め、投資・輸出主導から国内消費主導への経済の構造転換を図るとともに、国営企業の改革を進めることに強い決意を示した。6.5%以上の中高速成長の実現に向けた強い自信が伺えた。

地政学的なリスクについては、テロや中東情勢などが懸念される。これは予測できるものではなく、9.11のような同時多発テロが起きれば、勿論、世界経済へも大きな影響を及ぼす可能性はあるだろう。ただ、現在、国際社会はテロの防止に向けた協調を進め、そのための体制を強化しており、そうした国際的な取り組みの効果に期待したい。中東情勢については、サウジアラビアとイランは中東の大国であり、両国には対話によって問題を解決し、これまで同様、地域の安定と繁栄のために積極的な役割を果たしてほしい。日本は中東に原油の8割以上を依存しており、不測の事態が起きれば、その影響は避けられない。日本政府には引き続き、紛争解決に向けて外交努力を続けてもらいたい。

【賃金引上げ】

2016年は日本経済にとって極めて重要な年になる。デフレ脱却と経済再生に向けての正念場であり、これを実現するための鍵はGDPの7割を占める個人消費、また民間設備投資の拡大である。そして、個人消費の拡大の大きな駆動力は賃金の引上げである。経団連はこれまで昨年、一昨年と会員企業に対して賃金引上げを呼びかけ、昨年の春季労使交渉では、月例賃金は金額で8000円超、率で2.5%超の引上げが実現した。また、賞与・一時金についても高水準で妥結した。

今年も1月中旬に経労委報告を発表し、その中で経団連の賃金引上げへのスタンスを示していく。具体的には、力強い経済の実現に向けた名目3%成長への道筋を視野に置きながら、各社の収益に見合った積極的な対応を求めていく。即ち、収益が拡大した企業には、設備投資、研究開発投資、雇用の拡大と合わせて、昨年を上回る年収ベースでの賃金引上げを前向きかつ踏み込んで検討するよう求めたい。積極的な対応を会員企業に呼びかけることで、大企業を中心に賃金引上げへの環境を整備していきたい。

ベアについては、昨年の経労委報告では重要な選択肢の一つとするなど、2年続けて呼びかけたが、すんなりと実現した企業もあれば、相当努力した企業もある。業種業態により収益環境は様々であり、ベアについては各社の判断に委ねたい。今年は年収ベースでの賃金引上げを前向きに踏み込んで検討してほしいと思っている。賃金引上げが実現するかどうかが消費の拡大、ひいては経済の好循環の鍵になる。力を入れてやっていきたい。

【デフレ脱却のタイミング】

具体的なタイミングまでは分からないが、今年中にデフレから脱却すると見ている。その鍵は賃金引上げと設備投資の拡大であり、経済界としてこれをどの程度実現できるかにかかってくる。昨年を上回る賃金引き上げとともに、設備投資についても、国内の事業環境が整備されれば、2018年には2015年の約70兆円から80兆円程度にまで拡大することが可能と見ている。昨年の官民対話の場でこの見通しを示すとともに、必要な環境整備として9項目を挙げた。昨年、一年前倒しで法人実効税率の20%台への引き下げが実現し、原発の再稼働、TPPの大筋合意などの成果も上がっている。事業環境が着実に整備されれば、確実に設備投資が拡大し、デフレからも脱却できる。経団連としても最大限の努力を行い、会員企業に対して積極経営に転じていくよう、引き続き呼びかけていく。

【中小企業への支援】

取引価格の適正化は昨年の政労使会議においても重要なテーマとなった。同会議の合意文書には、原材料価格の高騰等をきちんと価格に転嫁し、取引価格を適正化すること、ならびに中小企業の生産性向上を大企業が支援することが盛り込まれている。経団連としても、地方懇談会などの場を通じて積極的に呼びかけるとともに、今年の経労委報告でも取引価格の適正化と生産性向上への支援について言及する。引き続き色々な場を通じて、会員企業に前向きな対応をお願いしていく。併せて、収益の拡大した大企業から中小企業へのトリクルダウン効果にも期待したい。

【安倍政権への期待】

安倍政権には、デフレ脱却・経済再生に向けて成長戦略を進化させてほしい。GDP600兆円に向けた具体的な道筋をつけるためにも、成長戦略の実行は欠かせない。成長戦略推進のための予算措置が最も重要である。

以上

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