一般社団法人 日本経済団体連合会
【経済情勢】
昨日、7-9月期のGDPが発表され、一次速報値の実質マイナス0.8%からプラス1.0%へと上方修正された。ここで特に注目したいのは、消費が2期連続でプラスになったことと、設備投資がプラスになったことである。これは経済にとって明るい材料である。本日発表された10月の機械受注統計も、前月比プラスとなっている。機械受注は民間設備投資の先行指標となることから、今後の設備投資の高い伸びが期待できる。景気は緩やかながらも回復基調をたどっており、力強さの気配も出てきた。今後、経済が安定的に成長していくことを期待している。安定成長を実現できるかどうかは民間の消費と投資の動向にかかっている。消費、投資ともに7-9月期に前期比プラスとなっており、成長に向けた好材料が揃ってきたと思う。11月26日の官民対話において、設備投資の拡大と来年の賃金引上げに向けて前向きに取り組んでいくことを申し上げた。経済界としても、景気回復に向けて、しっかりと役割をはたしていく。
安倍総理が10月に発表した新三本の矢では、第一の矢「希望を生み出す強い経済」が最も重要である。2020年に名目GDP600兆円を実現するためには、現状から約100兆円を積み上げる必要があり、総力を挙げて対応していかなければならない。経団連は今年1月に経団連ビジョンを発表した。2020年に名目GDPを600兆円程度まで伸ばしていくビジョンを描き、その実現のために取り組むべき課題を提起している。新三本の矢の第一の矢は、まさにこのビジョンで掲げた政策を実現するということである。経団連としても、最大限の協力を行っていく。高過ぎる目標という冷めた声も一部にはあるようだが、だからといって何もしないというのではなく、実現に向けて努力していくことこそ経済界が果たすべき役割だと思う。政治と経済が車の両輪となって、名目GDP600兆円の実現に向けて取り組んでいく。
【四国経済】
四国経済の景況感については、全体的には高い経済指標が示されており、回復基調にあると思う。一方で、課題については、人口減少や後継者不足への対応と併せて、中小企業にアベノミクスのプラス面を十分に浸透させていくことだと認識している。
四国経済の強みは、四国の特性を活かした産業振興、研究開発を進めていることだろう。具体的には、地域固有の資源を活かした観光振興、紙産業と造船業のクラスター形成、特徴的な野菜・果物を中心とした農産業などである。また、伝統的な匠の技術の源泉である人材も四国の強みである。四国は、ややもすると中央の施策が届き難いという面もあったが、地域の資源を活かして、特徴的な産業振興を図っており、地方創生のモデルケースとなるような事例も出てきている。四経連がリーダーシップを発揮し、地域経済の活性化に向けた有効な手立てを講じており、その成果が上がってきていることを心強く思っている。
四国新幹線の整備については、金沢は新幹線開業により様変わりしており、相当なメリットがあると思う。新幹線の経済効果は四国にとどまらず、九州や中国地方を含めた広域経済の発展につながるものだと思う。時間はかかると思うが、導入に向けた機運を盛り上げてもらいたい。
【働き方改革】
高齢化の進展により、要介護者が増えることは確実であり、こうした中で新三本の矢の三本目の矢として、「介護離職ゼロ」が掲げられたことを高く評価している。政府と経済界が協力し、介護離職ゼロに向けた取り組みを加速させていかなければならない。労働政策審議会で現在、介護休業等を取りやすくする方向で議論がされていると承知している。具体的には、介護休業、介護休暇を取得しやすくし、所定外労働時間を免除することなどについて検討されているが、経団連としては、この方向性を評価している。
介護と仕事を両立させる上で最も大切なのは、長時間労働を前提とした旧来の働き方や風土を経営トップの強いリーダーシップで変える「働き方改革」である。経団連としても、昨年来、会員企業に対し「働き方改革」を呼びかけているほか、セミナーの開催や、企業の先進事例の横展開など、精力的に取り組んでいる。
来年の経労委報告においても、働き過ぎ防止の必要性を強調したいと考えている。長時間労働の是正に向けた機運が醸成され、企業の取り組みが拡がるよう、経済界としても引き続き積極的に取り組んでいく。
【政治寄付】
昨年9月に会員企業・団体に政治寄付を自発的に実施するよう様々な場面を通じて呼びかけ、今年も同様の呼びかけを行った。企業の社会貢献の一環として、各社・団体の自主的な判断に基づいて政治寄付を実施するよう呼びかけるものである。
また、経団連としては、与党・野党の政策について政策評価を取りまとめ、公表している。
自民党への企業・団体寄付が増えたのはあくまで各社の自主的な判断で政治寄付を行った結果だと理解している。
日本経済が健全に成長していくためには自由主義経済をきちんと進めていく政治が必要である。そうした政策を推進する政党に対し、個社の判断で寄付を行うことは社会貢献の一環として重要であると考えており、この一点において政治寄付の呼びかけを行っている。
【防衛装備品の海外移転】
防衛装備品の海外移転については、成長戦略の一環として日本が有する技術を役立てていきたいと考えている。ただし、国際的な安全保障環境や同盟関係などを踏まえた上で、国の管理を前提とし、あくまで国の管理下で進められるべきことである。憲法との整合性についても当然、憲法の枠内ということは大原則であり、それは論をまたない。そうした枠組みの中で、日本が有する技術を活かしていくということである。