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会長コメント/スピーチ  記者会見における会長発言 記者会見における榊原会長発言要旨

2015年11月24日
一般社団法人 日本経済団体連合会

【設備投資】

26日の官民対話の場で民間設備投資と賃上げに係る考えを表明してほしいと安倍総理より求められている。設備投資について、これまでのデータは存在するものの、これから先、未来の投資は各企業の経営判断に依るものであり、はっきりとした数字を示すことは難しい。今後、国内の設備投資を伸ばしていくためには、事業環境の整備が必要である。

投資を海外でするか、国内でするかについては、その地の立地競争力に左右されるところが大きい。立地競争力を高めるためには、事業環境のイコールフッティングが不可欠である。具体的には、法人税改革、設備投資促進策、規制緩和、エネルギー価格の安定などであり、こうした課題にきちんと対応することができれば、国内の設備投資もまだまだ伸びると言える。

また、企業の成長拡大投資については、国内の設備投資のみならず、海外への設備投資、国内外の研究開発投資ならびにM&A投資など企業は多様な投資を行っている。これらを合算すると、ここ3年で企業の成長拡大投資はかなり伸びている。企業は内部留保を溜め込むばかりで、投資に消極的との声も一部にあるが、決してそうではない。色々な形で積極的に投資を行っている。国内投資も昨年は69兆円であったが、今年70兆円を超えるのは確実であり、着実に増えてはいる。

国内の設備投資が大きく伸びない要因については、最大の要因は海外とのイコールフッティングが確保されていないことであり、他にも国内市場の制約や労働力不足などが挙げられる。一方で、成長分野において新しい市場も生まれてきている。官民対話などの場で第4次産業革命の推進を訴えている。IoT、ロボットやAIなどの新技術を駆使することで、国内生産拠点で生産性を抜本的に向上していくことが可能である。こうした変革を進めることで、少子高齢化とは関係なく、国内需要も十分に伸びると思っており、投資の拡大も期待できる。ロボットやスマート社会、水素社会、次世代航空機など新しい成長が見込まれる分野では、関連する産業も含めて、まだまだ国内にも投資機会を増やしていく余地はある。そのための環境整備を進めることが求められている。

【賃金引上げ】

組合側の要求も出ておらず、まだ具体的に申し上げる段階ではない。経団連としては、過去2年間、業績を拡大した企業には前向きな対応をしてほしいと呼びかけてきた。その結果、昨年、今年と高い賃金引上げを実現した。来年についても、引き続き業績を拡大した企業には前向きな対応を呼びかけるつもりである。経済の好循環を実現していくため、継続的な賃金引上げが必要であると認識している。

今年1月に発表した経労委報告の中で、賃金について2つのことを申し上げた。第一に、業績を拡大した企業には賃金引上げについて前向きに検討してほしいと呼びかけた。第二に、ベアも選択肢の一つであるという考えを示した。経労委報告の中で、ベアについて前向きに言及したことは初めてだったと思う。来年の経労委報告でベアについてどのような書きぶりになるかはまだ申し上げられない。ただ、賃金は年収ベースで考えるべきであって、定昇、賞与・一時金、ベアを総合して考える必要があり、総合的に従業員の手取りの賃金が増えることが重要である。加えて、諸手当や賃金引上げの配分のあり方なども検討課題となっている。子育て世帯は、教育資金などの支出が多く、消費性向が高い。子育て世代への配分を手厚くすることも今後、検討していく必要がある。

【企業の内部留保】

まず内部留保がどういうものか正確に理解する必要がある。企業が現金を溜め込んでいると一部でも言われているが、実際にはそうではない。350兆円の金が企業にあるのではなく、現預金などに加えて、設備投資やM&Aなどの形ですでに使われているものもある。現在、内部留保は350兆円である一方、現預金は約210兆円である。日本企業の年間の総売上高は約1500兆円であるから、現預金はそのおよそ1.5ヵ月分である。この水準は過大ではなく、運転資金としては適切な水準である。他方、企業業績が向上している中で、積極的に国内の成長投資へと振り向けていくべきであるという点についても、異論はない。ただし、そのためには国内の環境整備が前提である。

現預金の実態は、企業の規模・業態によって大きく異なる。例えば、大企業に比べて資金調達が困難な中小企業は、より多くの現預金を手元に置きたいと思うだろう。また、経済の不安要素がある中では、企業としては一定の規模のキャッシュを持っておきたいという思いはある。この背景として、リーマンショックの際、手元資金が乏しくなる中で、なかなか運転資金を調達できなかったトラウマがある。不測の事態への備えということを踏まえれば、売上の1.5ヵ月分という現預金の規模は決して過大なものではない。

【景気認識】

7-9月期GDPは年率換算で-0.8%であったが、内訳を見れば在庫投資が-2.1%であり、この影響を除くと、実質的にはプラス成長であった。実際、消費もプラスに転じており、2四半期連続マイナス成長となったことをあまり悲観的に受け止める必要はない。むしろ在庫の取り崩しが進んだことで、10-12月期はプラスに戻ると思う。年間では1%弱のプラス成長、来年についても1.5%程度のプラス成長が見込まれる。景気が緩やかながらも成長軌道を辿っているという状況に変わりはない。

また、中国経済についても、鉄鋼や石炭など振るわない分野はあるものの、経済全体で見れば、6%台後半の成長を維持している。会員企業の声を聞いても、過度に悲観視していない。先日の日中経協訪中団に際し、李克強国務院総理から構造改革を進めることで6.5%以上の成長を続けていくという強い決意が示された。多少の波はあるだろうが、中国経済全体を冷静に客観的に見て、大きな懸念はないと思う。

【軽減税率】

経団連としては、軽減税率の導入には反対の立場であり、単一税率を維持したうえで、低所得者対策については給付で措置すべきだと主張してきた。軽減税率の導入をする以上、経団連としては中小事業者への配慮ならびに税・社会保障一体改革の中での社会保障財源の確保を前提に対象品目の検討を要望してきた。安倍総理は、国民の理解が得られる制度設計、事業者の混乱を避けるための配慮、財源は税と社会保障の一体改革の枠内との指示を出されたと承知している。これは経団連の考えと軌を一にするものであると思う。

【インフラ輸出】

アジアには9兆円とも言われる膨大なインフラ需要があり、そこでは勿論、中国など他国と競争することもある。他方、日中韓で協調、協力できる分野も多く存在する。インドネシアの高速鉄道の結果については残念だったが、どんなプロジェクトでも競争はつきものである。膨大なインフラの需要に対応するためには、金融機関の資金面での協力とともに、各国との競争と協調の組み合わせが重要になると思う。

【政治寄付】

経団連は自主的な判断に基づいて政治寄付を実施するよう会員に呼びかけている。どの政党に寄付するかはそれぞれの判断であり、そのための参考資料として政策評価を取りまとめ、公表している。経団連の役割は政治寄付の呼びかけ、政策評価の取りまとめまでであり、そこから先は各々の判断である。数字など何らかの期待を持って、呼びかけるものではない。

以上

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