一般社団法人 日本経済団体連合会
経団連は、今年の春季労使交渉において、コストプッシュ型インフレとはいえ、物価が上昇したこの機を千載一遇のチャンスかつ正念場と捉え、「官民連携によるデフレからの完全脱却」をキーワードに、30年ぶりの高い賃金引上げを記録した昨年以上の熱量と決意をもって、賃金引上げのモメンタムの維持・強化に取り組んでいる。各企業に対して、「賃金決定の大原則」に則りながら、特に物価動向を重視し、ベースアップ実施を有力な選択肢として掲げ、できる限りの賃金引上げを強く呼びかけている。
こうした中、本日の集中回答日において、製造業を中心に多くの大手企業で、1万円以上のベースアップや5%超の賃金引上げなど、昨年を大きく上回る水準の回答が出されたことを嬉しく思うとともに、安堵感を覚えている。
今年は、賃金引上げの必要性を労使共に強く認識し同じベクトルを向いて取り組んでいる。労働組合の要求通りの満額回答やそれを超える水準で早期に回答・妥結する企業がみられるなど、企業労使が真摯な議論を重ねた結果が表れていると感じている。
これから交渉のヤマ場を迎える他の大手企業や中小企業に本日の回答で示された賃金引上げのモメンタムが波及し、前向きな検討・実施につながることを期待している。
とりわけ、働き手の約7割を雇用する中小企業の賃金引上げには、労務費を含む適切な価格転嫁の実行が重要との認識を社会的規範とする必要がある。「パートナーシップ構築宣言」の参画企業の増加と実効性の確保に引き続き努めるとともに、消費者においても適切な価格アップを受容する気運が醸成され、「賃金と物価の好循環」実現につながっていくことが望まれる。
さらに、実質賃金の増加に向けて、2%程度の「適度な」物価上昇を前提に、ベースアップと生産性向上によって物価上昇に負けない賃金引上げを継続していく必要がある。経団連は、「社会性の視座」に立って、「デフレからの完全脱却」と「構造的な賃金引上げ」の実現に貢献すべく、来年以降も賃金引上げのモメンタムの維持・強化に取り組んでいく。