一般社団法人 日本経済団体連合会
1.政策に対する評価
自由民主党を中心とする与党の政策は、30年来のデフレからの完全脱却を目指して、GX(グリーントランスフォーメーション)やDX(デジタルトランスフォーメーション)をはじめとする新たな成長分野の競争力強化、構造的な賃金引き上げ、こども・子育て政策の推進などの内政課題への対応に加え、自由で開かれた国際秩序の維持・強化のための外交の展開や、経済安全保障の確保など、多岐にわたる課題に対し、一つひとつ着実に成果をあげる形で展開されており、高く評価できる。
2.政治への国民の信頼回復に向けて
民主主義を適切に維持していくためには、相応のコストを要するという現実がある(*1)。
経団連はかねてより、「政党とは、同じ思想・信条を持つ党員から成り立つものであり、政党にとって党員の維持・拡大のための自助努力が不可欠である。この点に照らし、最も重視すべきは党員からの会費・事業収入であり、これに準ずるのが民間からの自発的な寄付である。公的助成はあくまでもこれらを補完するものと位置づけるべきである」(2003年1月『奥田ビジョン 活力と魅力溢れる日本をめざして』)との見解を示してきた。
一方、民間からの寄付については、社会的実在である企業も、その担い手として期待される(*2)。特に、経団連の呼びかけを踏まえた企業・団体による政治寄附は、政党の政治資金団体を窓口として行われる。これは、特定の利益誘導を図るようなものではない。
こうした中、先般、政治資金パーティーの収入に関する政治資金収支報告書の不記載の問題が発生したことは大変遺憾である。国民の政治不信の高まりを真摯に受け止め、再発防止に向けて全力で取り組む必要がある。
政治資金については、透明性の向上が不可欠である。先の国会における政治資金規正法の改正により、政治資金パーティーに関する公開基準の引き下げ等を通じた透明性の向上が図られるとともに、連座制に相当する規定の創設をはじめとする改革が行われたところである。引き続き、政治のサイドが自ら説明責任を果たすとともに、政党のガバナンスの強化などを通じて、政治に対する国民の信頼回復に努めることを強く求める。
3.政治との連携強化に向けた経団連の取り組み
経団連はこれまでも、民主導の経済社会の実現に向けた改革を加速するため、政治との連携を図ってきた。引き続き、経済活力と国民生活の向上に資する政策提言、政党・政治家とのコミュニケーション、官民一体となった経済外交の推進、企業人の政治参加意識の高揚などの活動を積極的に行い、政治との連携をより一層強化していく。
企業・団体による政治寄附については、企業の社会的役割の一環として重要性を有するとの認識の下、政策本位の政治の実現、議会制民主主義の健全な発展などに向けて、クリーンな民間寄附の拡大を図っていく必要がある(*3)。
そこで、経団連は、会員企業・団体に対し、自主的な判断に基づき、自由主義経済のもとで企業の健全な発展を促進し、日本経済を次なる成長のステージに引き上げ、国民生活の向上に資する政策を進める政党への政治寄附を実施するよう呼びかけるとともに、政党の政策評価も実施していく。
あわせて、企業・経済界は、デフレからの完全脱却を実現し、成長と分配の好循環を実現すべく、サステイナブルな資本主義の実践に取り組んでいく。
- *1 政治資金規正法において、支出項目として、人件費、光熱水費、備品・消耗品費、事務所費、組織活動費、選挙関係費、機関紙誌の発行その他の事業費、調査研究費などが挙げられている。
- *2 八幡製鉄の政治献金に対する最高裁判決(最大判昭45.6.24):
『政党は議会制民主主義を支える不可欠な要素なのである。(中略)その健全な発展に協力することは、会社に対しても、社会的実在としての当然の行為として期待されるところであり、協力の一態様として政治資金の寄附についても例外ではないのである』 - *3 八幡製鉄の政治献金に対する最高裁判決(最大判昭45.6.24):
『会社による政治資金の寄附は、客観的、抽象的に観察して、会社の社会的役割を果たすためになされたものと認められるかぎりにおいては、会社の定款所定の目的の範囲内の行為であるとするに妨げないのである』