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Policy(提言・報告書)  総合政策 夏季フォーラム2024軽井沢宣言 ― サステイナブルな未来社会のデザイン ―

2024年7月19
一般社団法人 日本経済団体連合会
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経団連は、「サステイナブルな資本主義」を実現するために、成長と分配の好循環や分厚い中間層の形成に向けた取組みを推進しているが、その取組みを通じて実現する日本の2040年の将来像を示すものとして、「Future Design 2040」(仮称)を検討している。

この検討の一環として、夏季フォーラム2024では、グローバルな視座と、デジタルを活用して経済成長を実現し、社会的課題を解決するSociety 5.0の考え方も踏まえながら、「サステイナブルな未来社会のデザイン」を統一テーマとし、未来社会を描くために欠かせない成長に焦点を当て、議論を行った。第1セッションから第3セッションを通じ、2040年の未来社会像や想定される国内外の諸課題について意見交換を行い、分科会では、DX、GX、地域活性化、人材育成の4つのテーマを軸に時間をとって突っ込んだ議論を行った。

議論を踏まえ、深刻な人口減少・少子高齢化が進む中にあって、高齢化がピークを迎える2040年に目指すべきサステイナブルな未来社会の姿と産業界の役割や政府への期待を下記の通り取りまとめた。この軽井沢宣言が、Society 5.0をアップデートし、わが国産業界が新たな価値をグローバルに提供していく。政府には、関連する施策の果敢な遂行を期待したい。

① 新たなデジタルテクノロジーの社会実装への挑戦

2040年のめざすべき姿
  • AIをはじめとするデジタルテクノロジーの社会実装や、データ利活用・連携を通じて、政府・中小企業・個人を含む社会全体のDXと生産性向上、イノベーションによる新たな価値の創出が世界に先駆けて進んでいる。これにより、持続的な経済成長やウェルビーイングの向上が実現している。

産業界の役割
  • わが国としての長期的なビジョン・戦略のもとで政府と連携し、スタートアップ振興等を通じてイノベーション・エコシステムを構築する。その際、人のため、社会のためのテクノロジー活用に向けた倫理的・哲学的な議論も踏まえることが重要である。また、金融や医療、コンテンツのクリエーション等様々な分野において、目に見える新たな価値を創出していく。

  • グローバルなデータ連携に向けて、政府との緊密な連携のもと、信頼性が確保され国際的に相互運用可能なデータスペースの構築や、国際的なルール形成を進める。

政府への期待
  • 産業・社会全体を俯瞰した長期的なビジョン・戦略を策定し、イノベーション促進に向けた大胆かつ継続的な投資や、必要なデータやインフラの整備を諸外国の好事例を参照しつつ推進すべき。これは、企業における投資の予見可能性確保や、産学による人材の長期的育成等にも寄与する。また、データ連携を支えるデータスペース構築の大前提として、認証基盤を早急に整備すべき。

  • 規制・制度改革の断行はもとより、公益性の高い分野や、従来型の事前規制の枠組みを超えた対応が求められる領域を中心に、イノベーション促進やデータ利活用・連携に向けた規制のあるべき姿を示すべき(例:国の共通基盤の民間活用、共通コードの作成、優先順位の明確化、インセンティブ/ペナルティの設計、個人情報保護・利活用のバランス)。その際、官民が連携しながら、新たな価値創出に向け国民の理解を得るための活動を推進すべき。

② エネルギーの安価・安定供給と、GX・CEの実現

2040年のめざすべき姿
  • GX・CE(Circular Economy)・NP(Nature Positive)が一体的に進展している中で、安価で安定的なエネルギー・資源の供給や経済安全保障が確保され、わが国の国際競争力が維持・強化されている。

  • 2050年CN(Carbon Neutral)に向け、経済性や技術成熟度を反映した合理的な道筋で、GHG排出量を着実に削減し世界のCNにも貢献している。

産業界の役割
  • GX・CE技術・製品の開発・社会実装等に取り組み、豊かな付加価値創造社会を構築し、成長と分配の好循環に貢献する。また、多様な道筋による地球規模のCNをリードする。

  • 個社の取り組みに留まらず、バリューチェーン全体での企業間連携の深化やエコシステムの構築を図り、GX・CEの実現に貢献する。

政府への期待
  • CO2排出削減に伴うコストアップに対する国民理解の促進、カーボンプライシングの詳細設計、民間における投資予見性の確保等に取り組むことを通じて、社会の変革を促すべきである。海外市場も意識して国際的なルール形成をリードすることも必要である。

  • 再エネや原子力など脱炭素電源による電力の安価・安定供給を確保すべきである。とりわけ原子力について、政府による具体的な方針の明確化は喫緊の課題であり、電力事業者の投資予見性確保に向けた事業環境整備や、安全・地元理解を大前提とする再稼働、新増設・リプレース計画の具体化を急ぐとともに、高速炉・高温ガス炉・核融合の開発・実装を着実に推進することが肝要である。また、水素・アンモニア・e-methane・e-fuelを含む燃料の安定調達の実現や、送配電網整備への投資促進、省エネ対策の推進が必要である。

③ 地域から創る日本の未来

2040年のめざすべき姿
  • 人口減少下においても、地域経済社会が多極分散型で自律的・持続的に発展している。

産業界の役割
  • グローバル市場を見据えた地域への投資拡大と雇用創出により、地域経済の成長・発展を牽引する。また、企業も含めた多様な主体の参画による内発型の地域づくりを進め、地域の魅力向上に貢献する。

政府への期待
  • 広域・多分野・産学官連携を図り、リスク分散型でレジリエントな圏域(地域生活圏等)の構築に向けて、真に実効的な体制整備を省庁横断的かつ伴走型支援により推進すべき。とくに、産業・行政DXや防災に資する新たなデジタルテクノロジーの社会実装を可能とする官民でのインフラ整備や自治体間連携、企業の地域への積極的な投資を促す仕組みづくり、規制・制度改革を断行すべき。

  • 有限な地域資源を活かし、各地域の個性や主体性が発揮できる地域経済社会の維持・活性化に向けて、人口減少/少子高齢化・大規模災害・広域経済圏の形成・多様性の尊重・地域間競争等の今日的課題を踏まえ、新たな道州制(仮称)も視野に入れ、わが国の統治機構やガバナンスのあり方、合併を含む地方自治体単位の見直しについて、正面からの議論を求める。

④ グローバルリーダーの育成

2040年のめざすべき姿
  • 世界各国で、多様なバックグラウンドを持つ人たちと協働しながら、内外の様々な社会課題の解決に取り組み、新たな経済価値を生み出すとともに、国際連携をリードするグローバルリーダーが多数育成され、活躍している。初等中等教育で個の主体性を育てる教育が普及している。高校、大学段階で、海外に長期留学をする生徒・学生や、国内に留学する外国人の数が飛躍的に増大している。

産業界の役割
  • 留学を通じた経験を評価し、海外留学経験者や外国人留学生を積極的に採用する。そのために採用スケジュール、キャリアプラン、評価報酬制度の見直しを行う。

  • 初等中等教育段階から、産業界が求めるグローバルリーダーの育成を意識した教育が行われるよう、産官学で連携する。教育現場への人の派遣等により多様性のある教育を支援する。

政府への期待
  • 政府は、国による奨学事業の大幅拡充(OECD平均を超える公財政教育支出)を通じて、志ある高校・大学生の長期海外留学への積極支援と、外国人留学生の受入および定着のための環境整備を図るべき。同時に、個の主体性を尊重し多様性を育む教育を実現するため、学びと社会がより連携した抜本的な教育改革の断行を求める。

以上

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