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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2025年1月9日 No.3666 ヘルス・イノベーションに向けて日本に期待 -Gaviワクチンアライアンスと懇談

ニシュタール氏(右)と中山委員長

経団連の中山讓治企業行動・SDGs委員長らは11月28日、東京・大手町の経団連会館でGaviワクチンアライアンスのサニア・ニシュタールCEOと懇談した。概要は次のとおり。

■ 「予防」への思い

「予防」は、大災害などに備えるために重要な概念である。世界中で、災害あるいはパンデミックといった危機的な状況はある意味で日常的なものになりつつある。私の母国であるパキスタンは、2022年に史上最大級の洪水に見舞われ、3200万人が家を失うなど非常に大きな損害を被った。大災害を乗り越えるには、危機への備えとレジリエンスが重要であると実感した。私が現在携わっているヘルスケアの分野においては、予防接種が最も大きな効果をもたらすアプローチであると感じている。予防接種によって、子どもの死を大きく減らし、健康増進による経済的利益を生むなど社会的インパクトをもたらすことができる。これまでも津波や地震に対峙してきた日本は、災害リスクの軽減や災害時の対応という観点で、世界的なリーダーになっていると感じる。日本のことわざにある「備えあれば憂いなし」が実社会で体現されているのだと思う。

■ 官民連携によるヘルス・イノベーション

Gaviワクチンアライアンスは、国にかかわらず平等に予防接種を行うことで世界の子どもの命を救うことを目指している。貧しい国々のワクチンへのアクセスを確保する活動を行っており、この20年間で10億人の子どもたちにワクチンを提供し、子どもの死亡数を半減させた。

Gaviは、ワクチン製造会社との長期的パートナーシップを通じて、ワクチン単価を大幅に引き下げている。また、ドナー国からの寄付金を償還原資とするワクチン債を発行して資金調達を進めるなど、官民それぞれのセクターと協力することにより、予防接種を軸とした強靭な保健システムの構築を支えている。

調達したワクチンを現場へ届けるうえでは、民間企業のイノベーションが重要になる。Gaviは、ソリューションを持つ企業と現地政府・パートナーとの連携を生み出し、技術・イノベーションの導入を促進している。

日本企業との連携では、日本電気の指紋認証システムを出生証明書がない子どもたちの本人認証に活用し、豊田通商のワクチン専用保冷車によってラスト・ワンマイルにおけるワクチン配布を可能にしている。世界でもよく知られる日本企業のイノベーションは、低中所得国における保健システムの変革において重要である。

■ 30年に向けた新戦略Gavi6.0と日本への期待

Gaviは24年6月、SDGsやユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成年度を迎える30年に向けた新戦略を発表した。この戦略では、20~30年の10年間で、00年設立時から20年かけて達成した人数と同じ10億人への予防接種を目指す。この野心的目標の達成には、支援国における保健システムの強化が不可欠である。

予防接種は、日本が重視する気候変動や人間の安全保障においても主要な柱であり、UHC実現に向けた重要なステップである。25年の第9回アフリカ開発会議(TICAD9)や、日本が議長国となる30年のG7に向けて、日本の支援とリーダーシップに期待している。

【ソーシャル・コミュニケーション本部】

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