経団連は3月28日、東京・大手町の経団連会館で環境委員会地球環境部会(船越弘文部会長)を開催した。電力中央研究所の上野貴弘上席研究員から、米国と中国の温室効果ガス排出削減目標であるNDC(Nationally Determined Contribution=国が決定する貢献)について説明を聴いた。概要は次のとおり。
世界の温室効果ガス2大排出国である米国と中国の次期NDCが、日本を含む諸外国の気候変動対策に与える影響は大きい。その提出時期や目標値について考察することは重要である。
米国の次期NDCは、2024年11月の大統領選挙の結果に左右されるだろう。ジョー・バイデン大統領が勝利した場合、大統領選挙前も含めて、期限(25年2月)までに次期NDCを提出するものとみられる。一方、ドナルド・トランプ前大統領が勝利した場合、大統領就任後速やかにパリ協定からの再脱退を宣言し、26年に正式脱退となるだろう。同時にNDCも消滅することになる。
バイデン大統領としては、再選戦略と気候変動対策のバランスを取った意思決定が重要となる。若年層、左派層は急速な脱炭素化を支持する一方、激戦が予想されるミシガン州、ペンシルベニア州では、脱炭素化による経済・雇用への影響が懸念されている。
さまざまな状況に鑑みると、「35年に05年比で67~70%減」といった次期NDCを大統領選挙前の24年8~9月ごろに提出する可能性がある。なお、この数値目標は、インフレ抑制法を加味した排出削減よりも20ポイント以上高く、達成は困難と考えられる。
中国の次期NDCについては、習近平国家主席が出席する首脳級の国際会議で発表される可能性がある。その候補としては、24年9月に開催される国連総会が有力である。次期NDCの内容としては、習主席自身が掲げた「60年カーボンニュートラル(CN)達成」と1.5度目標の整合性を意識したものになると考えられる。
米中共に予想が難しいが、日本としては、早期提出の可能性も念頭に置きつつ、NDCの達成が義務ではないことを踏まえ、目標を検討すべきではないかと考える。
【環境エネルギー本部】