経団連は3月22日、東京・大手町の経団連会館で「ダイバーシティと女性の健康増進セミナー」を開催し、約220人が参加した。
冒頭、次原悦子ダイバーシティ推進委員長があいさつ。経団連は2030年までに女性役員比率30%を目指し、タレント・パイプラインの構築に取り組んでいるが、そのためには「企業の健康経営」や「キャリアとウェルビーイング」の推進が重要な課題であると述べた。概要は次のとおり。
■ 基調講演「女性と健康に関する自民党明るい社会保障改革推進議員連盟の取り組み」(加藤勝信同議連顧問・衆議院議員)
先日、経済産業省から、「女性特有の健康課題による社会全体の経済損失」は、年間で約3.4兆円との試算結果が発表された。女性特有の健康課題は、日々の生活のQOL(Quality of Life)や就業継続に影響するだけではなく、職場での業務効率、ひいては企業の経営そのものにも大きな影響を与える。
当議連では、女性の健康を守る政策について三つ提案した。(1)国立成育医療研究センターを拡充して女性の健康ナショナルセンターを創設し、生涯を通じた女性の診療と、全国の研究機関等の支援の両面の司令塔となって中心的な役割を担わせること(2)労働安全衛生法に基づく事業主健診に女性の健康に関する項目を追加すること(3)企業のなかで、特に男性経営者あるいは男性の同僚の理解を得ること――である。
当議連として、健康課題を俯瞰し、幅広い理解を求めつつ、性差や、より個人の状況に寄り添った施策をしっかりと進めていきたい。
■ 特別講演「エンパワーする女性の健康~Innovations, Investments, and Impact」(ケビン・アリ Organon&Co.CEO)
当社は、日本の官民の取り組みと軌を一にし、より多くのアクセス、より多くのイノベーション、より多くの研究、よりジェンダーに優しい政策を通じて、女性にふさわしい投資を提供することに尽力している。
医薬品業を通じての貢献だけでなく、当社は女性のライフステージの全てを通じてサポートする職場ポリシーを持っている。更年期障害への対応も、家庭の事情への対応も、家族計画も、愛する人のケアも、従業員にとってはどれも重要である。私たちは、従業員が自らを特別な一員であると感じるときに成長すると考えている。当社の重要な核となる価値観として、職場の全員がビロンギング(Belonging、帰属意識)を感じることを位置付けている。
■ パネルディスカッション「キャリアとウェルビーイングを考える組織の作り方」
パネルディスカッションでは、相馬知子経産省経済産業政策局経済社会政策室長から、「健康経営優良法人」「なでしこ銘柄」といった施策を通じて、女性と健康を重視した企業を支援していることが紹介された。劉越オムロンサステナビリティ推進室長からは、女性の健康課題に対し、女性の観点から商品作りに取り組んだプロジェクトや、他社との連携について、黒嶋敦子熊谷組管理本部ダイバーシティ推進部長からは、女性管理職比率などの目標達成を目指した取り組みによる採用・離職防止の効果、投資家の評価に好影響があることなどについて、それぞれ説明があった。産業医・産婦人科医の平野翔大氏からは、健康による生産性の可視化と、データを的確に把握して対応する専門家の役割の重要性について指摘があった。コーディネーターを務めたW Societyの谷村江美氏は、「健康課題への取り組みを当事者個人だけに任せるという時代ではもうない。従業員のウェルビーイングや健康の視点だけではなく、企業経営、企業の持続的な成長の観点からも重要な取り組みである」と締めくくった。
【ソーシャル・コミュニケーション本部】