経団連(十倉雅和会長)は3月27日、都内で盛山正仁文部科学大臣をはじめ文科省幹部との懇談会を開催した。経団連からは十倉会長、冨田哲郎審議員会議長をはじめ副会長、審議員会副議長ら10人が出席し、教育・科学技術・コンテンツ政策をめぐって幅広く意見交換した。概要は次のとおり。
冒頭、十倉会長は、「持続可能な成長と活力ある経済社会の実現のカギを握るのが、教育・人材育成である。現在のみならず、将来の国際競争力を見据えて、産官学が連携して、オールジャパンで取り組むことが重要である」と発言。「イノベーション創出に不可欠な高い専門性やスキルを有する高度専門人材をめぐっては、国際的な人材獲得競争が激化している。そのような認識のもと、2024年2月に博士人材と女性理工系人材の育成・活躍に焦点を当てた提言を取りまとめた。盛山大臣のリーダーシップのもと、産官学が同じ認識を共有してこの問題に取り組んでいく必要がある」と述べた。科学技術政策に関しては、わが国の研究力の低下が深刻であることを踏まえて、科学技術立国の実現に向けた取り組みの強化に期待を示した。さらに、日本経済に競争力を取り戻すうえで、スタートアップエコシステムの抜本的強化が急務であり、大学を核としたスタートアップエコシステムの構築を求めた。加えて、日本発コンテンツのグローバル展開の重要性を指摘。コンテンツは、国のソフトパワーの源泉であり、高い潜在力を有していることから、国は成長産業と明確に位置付け、コンテンツ政策を戦略的に推進するよう呼びかけた。
続いてあいさつした盛山大臣は、3月26日に公表した「博士人材活躍プラン~博士をとろう」を紹介。博士人材の幅広いキャリアパス開拓の推進や大学院教育の充実、博士課程学生が安心して研究に打ち込める環境の整備、博士課程進学のモチベーション向上に取り組むことを表明した。一方、企業に対し、博士人材の採用拡大・処遇改善や従業員の博士号取得支援等の協力を求めた。また、スタートアップエコシステムの強化に政府全体で問題意識を強く持って取り組んでいる旨を述べた。コンテンツ政策については、令和5年度補正予算で措置された基金を通じてクリエイター・アーティスト等を支援していくと表明した。そして、「経済界と連携して、日本の将来を明るくしていきたい」と語った。
懇談では、経団連側から、「文科省の『博士人材活躍プラン』は、経団連の提言と方向性が同じである。文科省の強力なサポートをお願いしたい」といった意見のほか、「大学発スタートアップを増やすうえで、体系的な起業家教育が重要である」「コンテンツ振興策として、クリエイティブ分野の大学学部・学科の創設・拡充に取り組んでほしい」などの発言があるなど、文科省と活発に意見を交わした。
閉会に当たり、十倉会長は、「日本において『科学技術立国』を実現するためには、博士が尊敬を集め、科学者が子どもたちにとって憧れの職業となることが重要である。日本の科学者は世の中にもっと発信していくべきである。経団連としても、この問題について引き続き政府と連携して取り組んでいく」と述べた。
【SDGs本部】