経団連は3月8日、東京・大手町の経団連会館で、消費者関連専門家会議(ACAP)および消費者庁と「2024消費者志向経営トップセミナー」を共催した。消費者政策を担当する自見はなこ内閣府特命担当大臣のあいさつ、ユニ・チャームの志手哲也専務執行役員による基調講演に続き、「次世代につながる消費者との共創・協働」をテーマに、一橋大学の松本恒雄名誉教授をコーディネーターとし、先進的な取り組みを進める企業や消費者関連団体、消費者庁等によるパネルディスカッションを行った。概要は次のとおり。
■ 自見大臣あいさつ
消費者志向経営は、消費者と共創・協働し、社会価値を向上させるものである。未来・次世代のために取り組み、消費者や社会の声を事業活動に生かすことが大きな柱となる。例えば、残さずに食べ切れて満足感のある介護食を提供し、消費者の満足と介護事業者の負担軽減を実現した事例や、口元の動きが見えるマスクを提供し、入院中の人や聴覚障害のある人と感染対策を講じつつ円滑に会話することを可能にした事例等、さまざまな先進的な活動が行われている。こうした消費者志向の活動が波及し、次世代につながっていくことを期待している。
■ 基調講演「Love Your Possibilities」(志手氏)
当社では、生活者が自らの可能性を慈しみ、他者と尊重し合える共生社会の実現を目指し、心と身体をやさしくサポートする商品・サービスを提供している。
性別や性的指向等によって活躍が制限されない社会の実現を目指して、例えば、新興国の学校で生理教育を実施し、女性の健康と社会参加を支援している。日本においても、生理に関する知識の向上や職務環境の改善に資する企業向け研修、手に取りやすいような生理用品のパッケージの開発と販売等を進めている。
生活者の負担を軽減するサービスとして、例えば保育園向けに、定額制で紙おむつが使い放題となる仕組みを提供している。保護者が記名しておむつを持参する手間も、保育士の管理の負担も軽減できる。また、一部の保育園と協働し、使用済み紙おむつを回収してリサイクルする取り組みを始めるなど、環境に配慮した活動も進めている。
生活者一人ひとりの声に耳を傾け、共生社会の実現に寄与する商品・サービスの提供を通じてSDGsの達成に貢献していく。
■ パネルディスカッション
全国消費者団体連絡会の郷野智砂子事務局長は、日本のペットボトルのリサイクル率の高さに言及し、消費者が日常生活の中で気軽に楽しく社会課題に取り組める仕組みが必要と指摘した。アスクルの桜井秀雄執行役員カスタマーサービス本部長は、同社の商品を購入すると、代金の一部が植林や海洋ごみの処理活動に寄付される仕組みを紹介。利便性を含め、顧客の共感を得られる購入体験の創出が重要と強調した。ACAPの村井正素理事長は、消費者との双方向のコミュニケーションを通じ、消費者の利用意向やニーズに合わせた課題解決手法を提案、提供していくことが重要になると述べた。消費者庁の藤本武士政策立案総括審議官は、特に若年層の行動変容を促すためには、商品が手元に届くまでの過程を体感できるイベントの実施や、学校・施設での継続的な活動等、リアルの体験の提供が有益だと説明した。
議論を受けて松本氏は、消費者のリテラシー向上や消費者保護を図りつつ、社会課題に取り組む企業を消費者が積極的に応援する「消費者力」を育成・強化し、消費者と事業者が共に主体的に協働することが次世代の社会づくりにつながると総括した。
【ソーシャル・コミュニケーション本部】