経団連(十倉雅和会長)の東原敏昭副会長・ヨーロッパ地域委員長、遠藤信博副会長、髙島誠ヨーロッパ地域委員長らは3月21日、東京・大手町の経団連会館で、英国のオリバー・ダウデン副首相らと懇談した。英国側の発言概要は次のとおり。
2023年5月にリシ・スナク首相が来日した際、首脳会談において、日英の戦略的パートナーシップ強化を掲げる「日英広島アコード」を発出した。日本と英国はルールに基づく国際秩序や法の支配といった基本的価値を共有しており、また、島国や貿易立国であるという共通点もある。日英関係はこれまで以上に緊密になっており、広島アコードのもと、安全保障や経済分野での協力を一層拡大していきたい。
サイバーセキュリティ分野では、経団連が24年1月に派遣した「日英サイバー協力ミッション」を踏まえ、両国間の官民連携の強化に取り組んでいく。また、伝統的な安全保障のみならず、経済安全保障についても協力を深化させていきたい。
日英は、50年カーボンニュートラル(CN)実現という共通の目標を掲げている。再生可能エネルギーの導入は、脱炭素化のみならず、エネルギー安全保障の観点からも重要である。特に、洋上風力発電について、英国は中国に次ぐ導入量を誇っており、日本における脱炭素化にも貢献できる。クリーンエネルギー分野において、英国企業による日本市場へのアクセス拡大を期待している。他方、ネットゼロとは、排出量をゼロにすることではない。エネルギーミックス全体では石油・ガスの活用も不可欠であり、そのうえで、化石燃料からの排出量を相殺する技術を開発する必要がある。独断的なアプローチは危険であり、国ごとの産業構造やエネルギー事情に応じた多様な道筋を認めるべきである。また、ネットゼロについて国民の理解を得るためには、雇用の維持や産業の保護も重要である。世界全体でCNを達成するためには、途上国の脱炭素化支援も重要であり、日英でインド太平洋地域における第三国協力を進めていきたい。
生成AIの進化により、今後、データセンターの消費電力の増加への対応が課題となるが、再エネのみでは賄えないことから、電力需要を管理する技術革新が求められる。また、データセンターを発電所の近くに設置することも一案である。
スナク政権は、Brexit後、英国の安定を取り戻し、安心してビジネスを展開できる環境の整備に努めている。EUとの間で合意した「ウィンザー枠組み」により、英EU間の貿易障壁は軽減されており、ロシアによるウクライナ侵攻後、EUとの関係は一層強固になっている。デジタルおよびデータ政策については、EUから独立性を取り戻し、日英EPAのデジタル章にも最先端の規定を盛り込むことができた。英国政府は、投資先としての魅力を維持すべく取り組んでおり、引き続き日本企業からの投資を歓迎する。
【国際経済本部】