経団連は2月27日、東京・大手町の経団連会館でパーパスブランディングに関するセミナーを開催した。グラムコの山田敦郎会長からパーパスブランディングの概要について、ソニーグループの神戸司郎執行役専務からPurpose(パーパス)を起点とした事業の推進について、それぞれ説明を聴くとともに意見交換した。概要は次のとおり。
■ グラムコ
近年、株主に加えてさまざまな利害関係者との価値協創を重視するステークホルダー資本主義が広がるなか、企業が自社のパーパス(存在意義)を明確化し、社業を通じて社会に貢献する必要性が高まっている。
企業ごとに手法は異なるが、パーパスは社会の要請に応えるとともに、従業員全体の意識を向上させ、パーパスの実現に向けた行動の実践を促す「インターナルブランディング」に資するものであることが重要である。例えば、あるエンターテインメント関連企業は、ビジョン、ミッションを廃止してパーパスに一本化し、グループブランドのロゴを刷新してグループ内の求心力、世界への発信力を強めている。また、ある非鉄金属メーカーは、パーパスに掲げる持続可能で豊かな社会の実現を目指し、他社と協働して100%再生素材のリサイクル缶を製造した。ある不動産企業は、自社の事業に共通する意義をパーパスで再定義し、異なる事業間のシナジーを創出した。加えて、パーパスを実践した従業員を「全社員投票」で表彰して士気を高めている。
企業がパーパスブランディングを通じて従業員のモチベーションを高め、社内外の意識の変化に応えていくことが、社会課題の解決や各社のブランド力の強化、ひいては日本の発展につながる。
■ ソニーグループ
ソニーグループは「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」というパーパス(存在意義)を掲げている。ゲーム、音楽、映画、エレクトロニクス、半導体、金融という六つの異なる事業を、世界で働く多様な社員が同じベクトルで推進するうえで、社員の共通の行動指針となり得るパーパスは大きな意味を持つ。
パーパスを実際の事業に落とし込めているかという点も重要視している。例えば、当社は、コンテンツを創るクリエイターと共に、ゲーム、音楽、映画といった人の心を動かす三つの事業を積極的に推進している。また、世界シェア首位のCMOSイメージセンサー(半導体)は、カメラやスマートフォンに搭載される重要な部品で、クリエイターの創作活動や感動体験の創出に大きく貢献している。世界を感動で満たすための前提として、環境負荷の軽減や人権配慮等のサステナビリティも欠かせない。
これまで、吉田憲一郎会長CEOが自らリーダーシップを執り、多様な社員と対話を重ねて、パーパスの策定・周知を推進してきた。社員が事業に共感し、情熱を注ぐことができるための「会社と社員との約束事」として、パーパスは重要な役割を担う。世界中の社員と共に、これからも感動の実現に向けて事業を推進していく。
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説明後、パーパスの策定過程、周知活動における課題、人事評価制度との関連の是非、既存の企業理念や経営ビジョンとパーパスの関係等について、活発に意見を交わした。
【ソーシャル・コミュニケーション本部】