経団連と九州経済連合会(九経連、倉富純男会長)は3月4日、福岡市内で「第74回九州経済懇談会」を開催した。経団連からは、十倉雅和会長、冨田哲郎審議員会議長、副会長らが、九経連からは倉富会長をはじめ会員約230人が参加し、「日本の経済安全保障の一翼を担う~九州から日本を動かす」を基本テーマに意見交換した。
経済懇談会の開会あいさつで九経連の倉富会長は、「九州経済は今、力強い成長軌道に入っている」「半導体をはじめとする成長の果実を九州全域の全ての企業に行き渡らせることが重要」としたうえで、「九州が先頭に立って、構造的な賃金引上げに向けたムーブメントを起こし、九州から日本を元気にする」と述べた。
続いて十倉会長があいさつし、「日本経済は、継続的な賃金引上げのモメンタム、投資・消費の拡大などに支えられ、持続的な経済成長の実現に向けた力強い一歩を踏み出している」と指摘。「2024年は、この上向きのモメンタムを加速させ、官民が連携して30年来のデフレからの完全脱却を実現する、歴史的な転換の年にしたい」と述べ、「そのために、経団連は『成長と分配の好循環の実現』に全力で取り組んでいく」との決意を示した。
■ テーマ1「九州の強みを生かした経済・食料・エネルギー安全保障の推進」
まず、新生シリコンアイランド九州やサステナブルで魅力ある農林水産業の実現、グリーントランスフォーメーション(GX)に関して、九経連から問題提起があった。
これに対して、経団連から、
- (1)半導体産業の振興に向けて、安価で安定的な電力の供給、工業用地、工業用水、交通網、人材などの各面におけるインフラ整備に産官学金が一丸となって取り組むべき(澤田純副会長)
- (2)農業の生産性向上には、先端技術やデータを用いるスマート農業の研究開発と社会実装の促進、生産から流通・販売に至るまでの多様な主体とのデータ連携が重要である(佐藤康博副会長)
- (3)GXの推進には、再生可能エネルギーの主力電源化、火力発電の脱炭素化、市況や地政学リスクに左右されにくい原子力の最大限の活用が重要である(小堀秀毅副会長)
- (4)シリコンバレーはもともと半導体産業の集積から始まり、そこに企業、研究機関・大学、人材などが集まって今の形になった。九州も世界に開かれたイノベーション拠点となることを期待している(南場智子副会長)
――との発言があった。
■ テーマ2「広域連携・官民共創による地方創生」
次に、スマートリージョン構想、デジタルトランスフォーメーション(DX)を活用した安全安心の地域づくり、地方への新たな人の流れの創出について、九経連から問題提起があった。
これに対して、経団連から、
- (1)各地域の多様なステークホルダーが主体的に地域の課題解決などに取り組む「内発型の地域づくり」を推進すべき。また、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の全国的な機運醸成への協力をお願いする(永井浩二副会長)
- (2)国土強靭化に向け、デジタル技術を活用した防災の推進、道路・鉄道ネットワークの複線化、災害リスクの低い地域でのコンパクトシティ形成などに取り組むべき(永野毅副会長)
- (3)観光業の持続可能な成長のためには、DXの推進により生産性を高め、人でしか行えないサービスやホスピタリティの向上を行い、質を重視した観光へ転換していかなければならない(菰田正信副会長)
- (4)「2024年版経営労働政策特別委員会報告」(経労委報告)では、春季労使交渉における経営側の基本スタンスとして、「構造的な賃金引上げ」の実現に貢献していくことが経団連・企業の社会的な責務であると明記した(小路明善副会長)
――との発言があった。
最後に、冨田審議員会議長が、九経連から話があった半導体、農業、エネルギーは、日本の経済安全保障の根幹をなすものであり、また、デジタルの力を活用した地方創生および防災・減災への対応は日本全体の喫緊の課題であるとしたうえで、いずれも積極的な対応が必要であると総括した。
◇◇◇
翌5日、一行は福岡県飯塚市の九州工業大学マイクロ化総合技術センターを視察。半導体人材の育成に向けた取り組みについて説明を聴くとともに、社会人実習セミナーの様子を見学した。
【総務本部】