政府は、2024年6月に策定する「経済財政運営と改革の基本方針2024」(骨太方針2024)に、25年度以降の中期的な経済・財政の枠組み(次期計画)を盛り込むと見込まれている。他方、成長と分配の好循環の実現には、適切なマクロ経済運営が欠かせない。
そこで、経団連は3月19日、「成長と分配の好循環の実現に資する経済・財政運営~次期経済・財政再生計画に向けた提言」を取りまとめた。提言の概要は次のとおり。
1.次期経済・財政計画の方向性
次期計画は、これまでの「経済再生なくして財政健全化なし」を維持し、デフレからの完全脱却を目指すべきである。そのためには「ダイナミックな経済財政運営」を推し進めることが肝要となる。
政府においては、短期の需要喚起ではなく、中長期の計画に基づいて戦略的に投資していく重要性が高まっていることから、民間の予見性を確保するためにも、予算の単年度主義を排し、計画的に投資を行っていくことが求められる(図表の①)。
これに対し、企業は積極的な国内投資の拡大と賃金の引き上げにより、成長と分配の好循環を力強く後押しすることが求められる。その結果、企業はこれまでの貯蓄超過主体から投資超過主体へと転換する(図表の②)と同時に、政府の財政収支も改善に向かうことになる(図表の③)。
2.財政健全化目標
次期計画では、これまでの取り組みを踏まえつつ、財政健全化目標を若干見直すことが考えられる。
フローの目標は、現行計画の「2025年度の国・地方を合わせたプライマリー・バランス(PB)黒字化を目指す」から、次期計画では「国・地方を合わせたPB黒字の継続を目指す」とすべきである。ただし、急激な景気変動等があった場合に柔軟な財政運営を可能にしておく必要があることから、中期的な時間軸として3~5年程度の平均で黒字を継続することが重要である。
ストックの目標は、現行計画の「国・地方の政府債務残高対GDP比の安定的な引き下げを目指す」を踏襲すべきである。なお、今後は金利上昇による実効金利や利払い費への影響も注視していく必要がある。
3.目標達成に向けた財政運営のあり方
次期計画では、財政運営のあり方も見直す必要がある。
歳出のうち社会保障以外の分野については、民間の予見可能性を高め、官民連携による安定的な国内投資の拡大を実現する観点から、3~5年間の中長期計画を策定するとともに、そのなかで各年度の歳出計画を定め、当初予算で着実に措置していくべきである。
また、社会保障については、国の負担である社会保障関係費だけでなく、社会保障給付費全体を俯瞰することが重要である。とりわけ、社会保障給付費の約4割を占める医療・介護については、高齢化による増加分に相当する伸びに抑えることを基本とすべきである。
歳入については、前述の各種中長期計画の見直しによって、大幅な歳出増となった場合には、マクロ経済動向等も考慮のうえで新たな財源を確保する必要がある。新たな財源については、負担能力に応じた負担の観点から、保有資産や資産所得等も能力として勘案し、全体の負担のあり方を考えるべきである。
【経済政策本部】