経団連は2月21日、東京・大手町の経団連会館で環境委員会廃棄物・リサイクル部会(関口明部会長)を開催した。東海大学政治経済学部経済学科の山本雅資教授から、「循環経済に資するイノベーションと競争条件」と題して説明を聴くとともに意見交換した。概要は次のとおり。
■ CEが社会にもたらすインパクト
サーキュラーエコノミー(CE)の実現には、ライフサイクルの各段階(資源投入、生産、消費、リサイクル・中間処理、最終処分等)で、さまざまな変革が求められる。それは個社だけでは限界があり、企業や業種の垣根を越えた連携が重要となる。産業界にとどまらず、消費者を含めた国民各界各層の行動変容も必要である。
この観点でCEの実現は、まさに社会経済システム全体の変革である。先駆的に取り組む「ファーストムーバー」が損をしない環境の整備が重要である。
■ CEに資するイノベーションの現状と課題
CEは、従来の「循環型社会」を目指すという意味にとどまらず、「資源の安全保障」という側面も含む。このため、CEの実現に向けた取り組みは、今後ますます重要性が増す。一方で、国や地域ごとに地政学的・歴史的背景が異なるため、CEの実現に向けた道筋は一つではない。
わが国の資源循環関連の法制度は、世界屈指の効率的なシステムであるが、とりわけリサイクルの促進に重点が置かれている。しかし資源の長期使用の観点からは、リサイクルよりもリユースやリファービッシュ(注1)等が望ましい場合がある。今後、CEコマース(注2)のような分野の進展が期待されているが、そのためには「減量化と耐久性」や「易解体性と安全性」といったトレードオフへの対応が求められる。
また、個社や個別業界だけでは解決し難い課題が多いことを踏まえ、今後、循環経済パートナーシップ(J4CE)やサーキュラーパートナーズ(CPs)のような異なる主体が連携する場が重要となる。
■ 経済界への期待
産業界は、最終処分量の削減に向けて「循環型社会形成自主行動計画」による自主的な取り組みを1997年から続けており、大きな成果を上げている。CEの実現は大きな社会変革への挑戦であり、この観点で産業界の積極的な取り組みが期待される。
一方で、いたずらに高い社会的コストをかけて資源が循環すれば良いわけではない。CE実現への取り組みを新たな成長機会ととらえ、付加価値の創造やイノベーションを追求する方向性が望ましい。またCEの実現によって、廃棄物の適正処理が不要となるわけではない。生活環境の保全は今後も重要である。
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このほか、「循環型社会形成自主行動計画~2023年度フォローアップ調査結果」について審議し、了承された。
(注1)一般に、使用された製品や部品を分解、洗浄、修理などによって、新品と同じ水準の製品に仕上げること
(注2)経済産業省の産業構造審議会産業技術環境分科会資源循環経済小委員会の資料では、CEに資する製品の利用を促進するビジネスとして、(1)利用=リユース、リース、レンタル、サブスクリプション、シェアリング等(2)修理・整備・再生=リペア・メンテナンス、リマニュファクチャリング、リファービッシュ等(3)二次流通=中古販売、二次流通仲介等――が例示されている
【環境エネルギー本部】