経団連は1月30日、東京・大手町の経団連会館でグリーントランスフォーメーション(GX)・エネルギー政策に関する説明会を開催した。経済産業省の龍崎孝嗣首席GX機構設立準備政策統括調整官と資源エネルギー庁の松山泰浩次長から、政府のGX推進策やエネルギー政策の動向について、それぞれ説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ 龍崎氏
わが国のGX実現に向け、官民で150兆円超の投資が必要となる。その手段として、2023年5月に成立した脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律(GX推進法)に「成長志向型カーボンプライシング構想」を規定した。同構想は、大きく3本の柱から成る。第一に、今後10年間で「GX経済移行債」によって20兆円規模の資金を調達して、産業界のGX投資を先行して支援する。第二に、GX投資に早く取り組むことがインセンティブになるようカーボンプライシング(CP)を制度設計する。CPにはGX製品のコスト競争力を高める機能があるが、それ以外のものへの国際競争力の影響などもある。まず国の先行支援も活用して技術開発や市場投入の準備を加速してもらう。一方、CPは時間をおいて、当初少ない負担で導入し、エネルギーに係る負担の総額が中長期的に増えない範囲内で徐々に引き上げていく。こうした将来像をあらかじめ示すことで、GXに早く取り組むほど負担が軽くなることを理解してもらい、GX投資加速の検討がなされることを期待したい。第三に、官民が連携してGX分野の円滑なファイナンスを実現する。
同構想を推進する中核機関として、GX推進法にはGX推進機構の設立が定められており、24年夏ごろに業務を開始すべく準備を進めている。当初は債務保証を中心とした金融支援業務を行う。官民150兆円のうち、国の支援を除いた130兆円分のファイナンスについて、金融機関がどうしてもリスクを取り切れない部分があれば誰かがリスクを補完する必要がある。その役割を機構が担う。その後、排出量取引制度の運営や化石燃料賦課金の徴収など、順次業務を拡大していく。機構はわが国のGX推進に不可欠な機能を担う組織となる。経済界の協力も得つつ、オールジャパンで体制を整備したい。
■ 松山氏
今後のエネルギー政策を考えるうえでは、電力需要を見極めながら、供給側の脱炭素への取り組みを加速することが重要である。データセンター誘致や半導体工場の新増設などを踏まえると、今後の電力需要は増加傾向との指摘もある。安定供給の確保と脱炭素の両立に向け、再生可能エネルギーはもとより、原子力、水素・アンモニア、CCS(二酸化炭素回収・貯留)などの脱炭素技術を最大限活用することが求められる。特に原子力に関しては、既設原子力発電所の再稼働を進めると同時に、長期脱炭素電源オークション(注)の対象に原子力も含めることとして、投資環境の整備に注力している。加えて、革新炉や高温ガス炉など革新的技術の開発を後押しする。23年のCOP28では、50年までに世界の原子力発電の設備容量を20年比で3倍とする目標が有志国で掲げられた。ロシアのウクライナ侵略により、エネルギー安全保障への不安が高まるなかで、あらためて世界中が多様な脱炭素技術に注目している証左である。安全性や安定供給の確保を大前提に、国民の理解を得つつ、電源投資を加速したい。
(注)脱炭素電源への新規投資を促進するための入札制度。落札電源は、固定費水準の容量収入を原則20年間得ることができる
【環境エネルギー本部】