2023年5月、G7広島サミットの機会に日英両国首脳が合意した「広島アコード」に「日英サイバー・パートナーシップを創設して、官民連携を強化」する旨、明記された。こうしたなか、サイバーセキュリティに対する経団連の取り組みを高く評価する英国政府の招待を受け、経団連は遠藤信博副会長・サイバーセキュリティ委員長を団長とし、総勢12人から成る「日英サイバー協力ミッション」を1月15~18日の日程で英国・ロンドンへ派遣した。概要は次のとおり。
■ 主な懇談相手
1.英国政府(サイバーセキュリティ当局等)
- 国家サイバー諮問委員会(NCAB)=シャロン・バーバー共同議長(ロイズ・バンキング・グループCIO)
- 国家サイバーセキュリティセンター(NCSC)=キャロリン・エインズワース エンジニアリング担当次長兼シニア・ジャパン・リレーションシップ担当
- 科学・イノベーション・技術省(DSIT)=エマ・グリーン サイバー・レジリエンス担当次長
2.シンクタンク
- 国際問題戦略研究所(IISS)=バスティアン・ギーゲリッヒ所長
- 王立国際問題研究所(Chatham House)=タリタ・ディアス国際法部門シニアリサーチフェロー
- 王立防衛安全保障研究所(RUSI)=フィリップ・シェトラー・ジョーンズ主任研究員
3.サイバーセキュリティ関連企業等(約15社)
- ビジネス・通商省=ジュリエット・ウィルコックス サイバーセキュリティ大使
- BAEシステムズ デジタル・インテリジェンス=クリス・カーター ゼネラル・マネジャー
■ ミッションの成果
同ミッションの主な成果は次の3点である。
1.日本産業界の取り組みに関する情報発信
サプライチェーン全体を俯瞰したサイバーセキュリティ強化に向けた日本産業界の取り組み(産業横断、官民、国際連携等)について、英国側の理解を得た。
2.サイバーセキュリティ分野における英国での官民連携の実態把握等
NCABとの政策対話やNCSC、DSIT等の視察、意見交換等を通じて、英国の官民連携の実態等を把握した。
IISSやChatham House、RUSI等、世界有数のシンクタンクによるブリーフィング、これらの機関やサイバーセキュリティ関連企業との意見交換・交流を通じて、広範にわたる最新情報の収集および知見の蓄積、国境のないサイバー領域における産業界同士のビジネス関係の構築が図られた。
3.協力覚書の発出
「広島アコード」のフォローアップという観点から、今後とも継続的に日英両国間の官民連携を深化・拡大すべく、NCABと経団連との協力覚書を発出した。同覚書のもと、Society 5.0 for SDGsやDFFT(Data Free Flow with Trust、信頼性のある自由なデータ流通)の実現に資するサイバー空間を共創するため、未来志向の日英協力関係の構築等を目指すこととした。
覚書署名式では、NCAB共同議長のオリバー・ダウデン副首相が「歴史的な広島アコードで、日英がサイバー協力の全領域に取り組むことにコミットした。経団連との協力覚書はその実現への一助となるもので、極めて重要な協力関係のマイルストーンである」とスピーチした。
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サイバーセキュリティ委員会は、同ミッションの成果を踏まえ、日英両国がどのような価値を共創できるかというゴールからバックキャストしつつ、サプライチェーン全体を俯瞰したレジリエンス強化やスキル・人材育成等に資する実効的な官民連携の取り組みを進めていく。
【産業技術本部】