経団連と経団連自然保護協議会(西澤敬二会長)は12月25日、「企業の生物多様性への取り組みに関するアンケート調査結果概要(2022年度調査)」を公表した。
生物多様性条約の愛知目標が10年に採択された後、企業の取り組み状況等を把握するため、毎年度アンケートを実施してきた(20年度、21年度は未実施)。今回は、昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)や日本政府の生物多様性国家戦略の決定、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)における検討といった国内外の動向を踏まえて、経団連会員企業を対象に新たにアンケートを実施したもの(回答326社、回答率21%)。その結果、多くの企業で生物多様性保全に向けた取り組みが進んでいることが明らかとなった。概要は次のとおり。
■ 経営における生物多様性の主流化
生物多様性に関する推進体制について、19年度調査結果と比較すると、取締役会や経営会議において生物多様性関連の報告・決定を行っている企業が増加傾向にあることが示された(図表1)。また経営理念・方針、サステナビリティ・環境方針等に生物多様性に関する記載をしている企業は78%と、19年度(75%)に比べて微増となった。このことから、企業の生物多様性への取り組みは着実に進んでいることが分かる。
■ GBFへの貢献
GBFの23のターゲットのいずれかに取り組む企業数は319社に上り、多くの企業でGBFに貢献する活動が進められている。そのうち、定量的な目標設定をしている企業は29%と、19年度(27%)より微増となった。
■ TNFDへの対応状況
同調査の実施時点ではTNFDの枠組みが試行版であったことから、多くの企業でLEAPアプローチ(自然関連のリスクと機会について評価するためのプロセス)の初期段階を行うことにとどまっている。一方、先行して対応を進め、生物多様性に関連する経営上のリスクや機会を特定している企業も複数存在していることが示された。
■ 生物多様性に関する取り組みにおける課題等
企業が生物多様性へ取り組む背景・理由として、「国際・国内の規範や社会的関心」「経営理念上または経営層が重視」等を挙げる企業が多かった。一方、取り組みにおける課題では、「指標、目標の設定や計測の難しさ」「シナリオの設定・評価の難しさ」「サプライチェーンが複雑」等が多く挙げられた(図表2)。19年度と比較しても、「事業利益に貢献しない」といった経営上の理由を挙げる企業の割合が減る一方、「指標、目標の設定や計測の難しさ」といった課題を挙げる企業が増えている(図表3)。経営上、生物多様性を重要視しつつあるなか、取り組みにあたっての課題が顕在化してきているといえる。
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経団連と経団連自然保護協議会は、今後もアンケートを継続し、経済界全体の取り組みの進捗状況を把握するとともに、同結果で挙げられた課題を踏まえ、企業の活動を支援すべく適切な情報を提供していく。
【経団連自然保護協議会】