経団連は12月19日、東京・大手町の経団連会館で、北海道東川町が主導して製作した映画「カムイのうた」(監督=菅原浩志、主演=吉田美月喜ら)の試写会を開催した。同映画は、アイヌ民族として差別されながらも、アイヌの伝統文化を後世に残すうえで大きな功績を残した実在の女性をモデルとし、多様な文化的背景を尊重して人権を守ることの大切さを伝えている。
2023年10月に、産業競争力強化委員会外国人政策部会(毛呂准子部会長)は活動の一環で東川町を訪問。菊地伸町長から、多文化共生社会の実現に向けた先進的な取り組み等を聴いたことを機に、同試写会の実施に至った。
菅原氏は舞台あいさつで、「北海道の地名のほとんどはアイヌ語由来である。アイヌ民族の歴史や文化が確かに流れているにもかかわらず、今もなおアイヌの出自を隠さざるを得ないと感じる方々もいる。自分自身のアイデンティティに誇りを持ち、多様性を尊ぶ社会の実現に向けて、日本の経済界の取り組みに期待する」と、映画に込めた思いを語った。
映画はすでに北海道で先行上映しており、24年1月26日以降、公開地域を全国に順次拡大していく。あらすじは次のとおり。
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大正時代の北海道。学業優秀なテルは、アイヌの血を引くというだけで進学を諦めざるを得なかった。理不尽な差別に苦しむテルたちのもとに、東京から言語学者の兼田教授がやって来る。テルの聡明さに驚いた兼田は、彼女が想像もしなかったある提案をする。アイヌの口承叙事詩(ユーカラ)を日本語に訳してみないか。文字を持たなかったアイヌの民は、ユーカラを通じて民族の歴史や文化を受け継いできた。それを文字に残すことができれば、アイヌの文化を広く知ってもらうことができる。テルは提案を受け入れ、上京することを決意する。その先に、悲しい運命が待ち受けているとは知らずに・・・。
【産業政策本部】