経団連のOECD諮問委員会(稲垣精二委員長)は11月28日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催した。2024年、経済協力開発機構(OECD)加盟60周年を迎えるわが国は、10年ぶりにOECD閣僚理事会の議長国を務める。そこで外務省の片平聡経済局長から、閣僚理事会議長国としてのわが国の重点分野について、説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ OECD閣僚理事会
OECD閣僚理事会は、加盟国および招待国の閣僚が参加する最も重要な会合であり、日本が前回議長国を務めた14年には、安倍晋三内閣総理大臣(当時)や関係閣僚が参加した。24年の閣僚理事会では議長国として、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の形成に向け、リーダーシップを発揮したい。
■ 議長国としてのねらい
議長国としてのねらいは、大きく三つある。
第1はインド太平洋地域へのアウトリーチである。OECD加盟国が世界経済で占める割合が低下していることを受け、OECDは加盟国以外へのアウトリーチを強化している。OECD加盟38カ国のうち、アジア大洋州からの加盟国は日本、オーストラリア、ニュージーランド、韓国のみだが、23年7月にはインドネシアが加盟の意図を表明している。14年にわが国が議長国を務めた際には、東南アジア諸国のOECDのルールへの参加や国内改革を促すことを目的に、OECD東南アジア地域プログラム(Southeast Asia Regional Programme, SEARP)を立ち上げた。10周年を機に同プログラムの成果を確認し、この動きを強化・促進していく必要性を発信したい。
第2は、ルールに基づく自由で公正な経済秩序の推進である。世界を分断ではなく協調に導くため、日本は、自由貿易の旗振り役として国際的な議論を主導していく必要がある。世界貿易機関(WTO)を中核とする多角的貿易体制の重要性を訴えることに加え、サプライチェーンの強靭化や経済的威圧などの新しい課題にも対応しなければならない。
第3は、先進的課題における日本のイニシアチブの推進である。デジタル化や気候変動などは、国際社会全体で取り組むことが不可欠である。課題解決の指針となるルールおよびスタンダードについて、OECDを活用し、日本が主導して国際社会に敷衍させたい。その具体的な活用例として、4点を挙げる。まず生成AIについては、G7の「広島AIプロセス」で議論している内容をG7以外の国々に広めることとしたい。次にデータ流通に関しては、信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)の具体化のための国際枠組みについてOECDと協力する案があることを踏まえ、立場の異なる米欧の橋渡し役となりたい。さらに気候変動では、各国のさまざまな気候変動対策の影響を測定する炭素削減策に関する包摂的フォーラム(Inclusive Forum on Carbon Mitigation Approaches, IFCMA)も活用しながら、パリ協定の達成のための多国間対話を促進する。最後に、経済のデジタル化に伴う国際課税上の課題への対処については、引き続き、OECDでの議論を促進していく。
【国際経済本部】