2022年12月に「昆明・モントリオール生物多様性枠組」(GBF)が採択され、23年3月には日本政府により「生物多様性国家戦略2023-2030」が閣議決定された。また、9月には自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)が開示フレームワークを示す提言を公表するなど、国内外で生物多様性に関連する動きが活発化している。
こうした昨今の情勢を踏まえ、経団連と経団連自然保護協議会は12月12日、生物多様性保全への企業の取り組みの深化を目指し、「経団連生物多様性宣言・行動指針」を改定、公表した。
改定のポイントは次のとおり。
■ 改定のポイント
(1)GBF、生物多様性国家戦略等を踏まえた内容
GBFが50年ビジョンとして「自然と共生する社会」を掲げ、30年ミッションとして「ネイチャーポジティブ」(NP)をうたっている。そこで、同宣言のビジョンとして「自然と共生する社会」の実現を目指し、NPに貢献する旨を盛り込んだ。また、GBFの「ターゲット15」や、国家戦略の基本戦略において、企業に焦点を当てた記述があることに鑑み、企業の役割を明確に記載した。加えて、TNFDの公表を踏まえ、サプライチェーン全体での評価、情報開示、ステークホルダーとの対話の重要性などを強調した。
(2)GX、CE、NPの統合的な取り組みへの言及
経団連の活動方針である「サステイナブルな資本主義」の実践に向け、グリーントランスフォーメーション(GX)、サーキュラーエコノミー(CE)、NPを統合的に進めていくこととした。
(3)構成の整理
これまでの宣言・行動指針の構成を整理し、全体構造(ストラクチャー)を明確化した(図表参照)。究極の目的である「ビジョン」として「自然と共生する社会の実現」を掲げたうえで、その実現に向けた「企業の役割」と「必要な視点」を明記。この「企業の役割」を果たすために、具体的な手法として九つの「行動指針」を示した。
■ 経団連生物多様性宣言・行動指針の概要
(1)ビジョン
自然と共生する社会の実現
(2)企業の役割
生物多様性・生態系を含む自然資本の保全・再興に貢献する財・サービスの提供や技術の研究開発およびサプライチェーン全体での取り組み
(3)必要な視点
グローバル・ローカル両方の視点を持ち、カーボンニュートラル・サーキュラーエコノミーと統合的にとらえ、地域や事業活動の特性に応じた多様な手法を用いてネイチャーポジティブ(自然の保全・再興)に取り組む
(4)行動指針
- (1)事業活動と生物多様性等の関係の把握・管理
- (2)カーボンニュートラル・サーキュラーエコノミーとの統合的な取り組み
- (3)地域の特性を踏まえた取り組み
- (4)情報開示をはじめステークホルダーとの適時適切なコミュニケーションの実施
- (5)経営トップによるガバナンス構築・リーダーシップ発揮
- (6)遺伝資源の公正かつ衡平な利用
- (7)生物多様性等の損失緩和措置のあり方
- (8)社会貢献活動
- (9)啓発活動
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経団連と経団連自然保護協議会は、今後、経団連生物多様性宣言・行動指針への賛同を募り、普及・実践を通じて、自然共生社会、サステイナブルな経済社会の実現に向けて取り組みを進めていく。
【経団連自然保護協議会】