経団連は11月7日、エネルギー情勢に関する懇談会をオンラインで開催した。同懇談会は、2022年来のエネルギー資源価格高騰を受け、国内経済への影響や政策的な対応など、最新の状況を把握する目的で開催している。第2回は、資源エネルギー庁の河野太志長官官房総務課長から、エネルギー政策の動向について説明を聴くとともに懇談した。説明の概要は次のとおり。
■ ウクライナ情勢を踏まえた国内エネルギーミックスの全体像
第6次エネルギー基本計画(21年閣議決定)における30年度のエネルギーミックス目標を策定した時は、世界全体でネットゼロが最重要課題だった。当時、日本も世界と足並みをそろえて目標を策定し、再生可能エネルギーの大量導入を軸としつつ、原子力なども活用しながら、CO2排出削減を目指してきた。その後、ロシアによるウクライナ侵略を発端に、化石燃料価格が高騰したことで、日本における供給体制の脆弱性が露呈し、安定供給が喫緊の重要課題となった。日本を含め、資源を持たない国がロシアなど資源大国の情勢に振り回される局面が現在も続いている。
現在の技術水準や地政学的な制約を前提とすると、安定供給、経済効率性、環境というエネルギーの政策の基本である3要素を同時に実現することは、簡単なことではない。特に安定供給の面で、日本の資源輸入量に占めるロシアの割合は他国に比べ高くはない。しかし、日本はエネルギー自給率自体が非常に低いため、エネルギー供給におけるロシア依存度が高くなっている。上記のトリレンマの解消を目指し、日本の経済社会に最も有益なバランスを模索しなければならない。
■ エネルギー価格の上昇と激変緩和措置
22年来、世界的な化石燃料価格の高騰を背景にガソリン価格や電気料金が高水準で推移している。さらに足元で円安の影響により石油の元値が急騰したため、2日に価格激変緩和措置の継続を閣議決定した。ガソリンを含む燃料油は、これまでも元売りに対する補助金によって小売価格を抑制していた。この補助はもともと9月末で終了することが予定されており、6月から段階的に補助率を引き下げてきていた。ところが、産油国の自主減産の本格化や為替動向も相まって8月初頭から価格が急騰したため、措置を延長・拡大した。この措置は24年4月末まで講じられるが、終了時期は決定しておらず、賃金動向などの経済情勢を踏まえて今後検討する。また、電気料金については、22年8月ごろに規制価格の上限まで達した。現在の価格水準は落ち着いているものの、困難な状況に直面する家計や価格転嫁が難しい中小企業等の負担が過重なものとならないよう、燃料油とあわせて措置の延長を決定した。省エネ化を推進し、燃料価格の高騰に左右されない経済体制の構築のための構造改革を同時に行うことを目指し、24年5月に激変緩和の幅を縮小する。
■ 今後の日本のエネルギー戦略
エネルギーミックスを含むエネルギー政策のなかで重視される要素は、技術開発の状況や国際市場の動向などの時勢によって変化する。日本は島国であり自給率が低く、安定供給の確保という課題から逃れることはできない。そのために、再エネの主力電源化に必要な蓄電池の導入や、浮体式洋上風力、ペロブスカイト太陽電池などの技術的ブレークスルーを推進していく。現在の日本では、再エネ電源のなかでも太陽光が急増しており、調整電源として火力を活用せざるを得ない状況である。技術開発によって火力依存度を下げるためには、時間軸をもって戦略的な政策を講じることが必要である。短期的な変化に振り回されるものの、中長期的な視点でさまざまな策を着実に進めたい。
【環境エネルギー本部】