経団連は10月24日、東京・大手町の経団連会館で「経団連の活動に関する報告会・会員交流会」を開催した。久保田政一副会長・事務総長が、今後のわが国の経済外交のあり方に関する経団連の考えや取り組みについて説明した。会員企業等から約200人が参加した。概要は次のとおり。
■ 現状認識
2023年度の事業方針で掲げた「社会性の視座に立脚したサステイナブルな資本主義の実践を通じ、Society 5.0 for SDGsの実現を目指す」ためには、自由な経済活動を基本としつつ、ESG(Environment, Social, Governance)や経済安全保障といった時代の要請に応えていく必要がある。
■ 自由な経済活動の推進(ヒト・モノ・カネ・データの自由な流通)
通商政策については、世界貿易機関(WTO)の紛争解決機能の回復等を求める提言を取りまとめ、WTO事務局長に直接建議した。また、経済連携協定の重要性もあわせて訴えている。
質の高いインフラシステムの海外展開に向け政府と連携している。
「技術で勝ってビジネスで負ける」状況を打破すべく、ルール形成・国際標準戦略等のあり方も検討している。
デジタル化に伴う課税上の課題については、経済協力開発機構(OECD)を中心に交渉が行われている。経団連はOECDに数回にわたり意見を表明するなど、働きかけている。
データがもたらす価値を最大限に引き出すために重要な「信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)」の具体化に向けて、政府と連携している。
■ ESG
SDGsの実現に貢献すべく、経団連は企業行動憲章を改定し、会員企業にSDGsの実現に資する取り組みを求めている。
ESGの「E(環境)」のうち、エネルギー分野については、各国の実情に合った対策の必要性を訴えている。この点は、G7広島サミットの首脳コミュニケにも反映された。また、安全性が確認された原子力発電所の最大限の活用等も求めている。
気候変動については、国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)に毎年代表団を派遣し、日本経済界の取り組みなどを発信している。
「S(社会)」のうち、ダイバーシティの推進に向けて、各企業の女性役員をメンバーとするネットワークを形成している。
国際的にも議論されているビジネスと人権に関しては、政府が定めるガイドライン等の策定プロセスに参画し、企業の意見の反映に努めている。
「G(統治)」に関しては、政府が海外投資家の日本市場への投資拡大に向け取り組みを強化するなか、経団連も建設的な対話を進めている。国際会計基準(IFRS)財団を中心に策定される企業財務情報・非財務情報の開示に関する国際的なルールの草案に対しても意見書を提出している。
■ 経済安全保障
経済安全保障については、政府の複数の有識者会議に参加し、経済安全保障推進法やセキュリティー・クリアランス制度の議論に企業の意見を反映している。
サイバーセキュリティーについては、政府と緊密に連携しつつ、サプライチェーン全体を俯瞰したサイバーセキュリティーの強化に努めるとともに、同盟国・同志国との協力を推進している。
■ 地域別・国別の活動
経団連は、23年5月に開催されたG7広島サミットに先立ち、4月にB7東京サミットを開催した。貿易やグリーントランスフォーメーション(GX)、デジタルトランスフォーメーション(DX)等の分野に関する共同提言を取りまとめ、岸田文雄内閣総理大臣に手交したところ、その多くがG7の首脳コミュニケに反映された。
このほか、地域別・国別の委員会では、ミッションの派遣等を通じて、各国の政府・経済界と交流を深めるとともに、日本経済界の意見を発信している。
◇◇◇
その後の会員交流会では、常磐・三陸の海産物を利用した料理を楽しんでもらいながら、業界や地域の垣根を越えた会員相互の交流やネットワーキングが活発に行われた。
【国際経済本部・総務本部】