経団連の企業行動・SDGs委員会(吉田憲一郎委員長、西澤敬二委員長、中山讓治委員長)は10月18日、フィリッポ・グランディ国連難民高等弁務官の来日の機会をとらえ、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の最近の難民・国内避難民等支援活動について説明を聴くとともに意見交換した。グランディ氏の発言概要は次のとおり。
■ 世界で頻発する緊急事態とUNHCRの活動
世界では大きな緊急事態が頻発しており、そのほとんどが人為的なものである。この数年間で、エチオピア紛争、タリバンによるアフガニスタン制圧、ロシアによるウクライナ侵攻、スーダン紛争があり、さらに、イスラエルとハマスの間で紛争が起きた。これらの立地に注目すると、ウクライナは中東に近く、中東はスーダンに近く、スーダンはリビアに近く、紛争地が互いに接近していることを懸念している。
UNHCRは危機発生時に人々が移動を強いられる際の支援に注力している。危機が頻発しているので、UNHCRの職員も資金も不足している。日本を含む数カ国は多額の資金援助を続けてくれているが、すべての国がそうではなく、UNHCRの活動を支える寄付金はこの数年間で初めて減少している。ドナー国も新型コロナウイルスへの対応やウクライナ等の課題に圧迫され、資金を拠出する余裕がない。
近年、気候変動に起因する問題もUNHCRの活動の一部になっている。例えば干ばつは、農業、畜産業、漁業に悪影響を及ぼし、生活をそれらに頼る貧しいコミュニティーの間で水や土地をめぐる紛争を引き起こし、難民を生む。
さまざまな緊急事態がSDGsの達成を遅らせている。危機的な状況にあっても、教育、健康、衛生、人々が自立する能力、持続可能なエネルギー等、重要部門への投資を行わなければ、事態は悪化してしまう。緊急性の高い人道支援とSDGsのための投資は、かつてないほど密接なものとなっている。
■ ウクライナはじめ、世界の危機に対する経団連および日本企業の支援に感謝
経団連の呼びかけによる、日本企業からUNHCRへの20億円の寄付(2022年4月時点。その他団体への寄付も含めると合計40億円)はもちろん、22年12月の有志の国会議員や日本・ウクライナ友好議員連盟、日本財団、経団連が参画する「ウクライナの人々に発電機を送る越冬支援イニシアティブJAPAN」による発電機寄付(22年12月22日号既報)は、厳しい寒さに見舞われるウクライナの人々にとって助けとなった。
また、トルコ・シリア地震、リビア洪水、アフガニスタン地震についても、経団連1%クラブの呼びかけ等に応じた日本企業の支援は現地で大いに感謝されている。
■ グローバル難民フォーラムの開催に向けて
23年12月に、4年に1度の世界最大の難民支援イベントである、第2回グローバル難民フォーラム(GRF)がスイス・ジュネーブで開催され、日本は共同議長国を務める。GRFには、各国政府に加え、国際機関、NGO、民間部門、アカデミア等が参加し、それぞれが難民支援に関する宣言(プレッジ)を行う予定である。
宣言内容としては、寄付に限らず、「すべての難民が学校に通えるようにする」等の難民受け入れ国が行う宣言と、その実施に必要な財政・物資・技術的支援の提供をドナー国が行う宣言を組み合わせる、「マッチング・プレッジ」が奨励される。
経団連および日本企業には、難民登録や救援物資の配布等における技術的支援、教育・訓練を通じた難民の雇用、政府への働きかけ等を含む宣言を行ってもらいたい。
【SDGs本部】