経団連は9月20日、欧州のアドバイザリー企業であるラスムセン・グローバルから、ウクライナ復興に関する取り組みなどについて説明を聴くとともに意見交換した。同社は、アナス・フォー・ラスムセン前北大西洋条約機構(NATO)事務総長が設立し、地政学や安全保障・欧州政治等に関する分析を企業や政府等に提供している。説明の概要は次のとおり。
■ ハリー・ネデルク地政学シニアアドバイザー
2023年7月にG7は「ウクライナ支援に関する共同宣言」を発表した。この共同宣言は、当社が22年9月にウクライナ政府と共に作成した「キーウ安全保障協約」を踏襲している。共同宣言では、ウクライナの安全を長期的に保証するために、G7各国や、宣言の趣旨に賛同するG7以外の国々が、ウクライナとそれぞれ二国間取決めを結ぶこととしている。
二国間取決めをめぐる論点はいくつかある。1点目は、軍事支援の具体的な中身や経済支援の額が示されるかである。2点目は、法的拘束力を持つかどうか。1994年に締結されたブダペスト覚書では、ウクライナが核兵器を放棄する代わりに米英露がウクライナの安全を保証したが、守られなかった。3点目は、取り決めがうまく機能するかどうか。4点目は取り決めがいつ結ばれるかである。24年には、米国をはじめ多くの国で選挙が行われる。選挙中は交渉を進めたがらないことが多い。
■ オレナ・ソトニク・キーウ上級代表
ウクライナの再建は、ロシアが破壊した重要インフラを直ちに修復する早期復旧と、より中長期的な戦後復興の二つの段階がある。これらのために諸外国からの投資を増やすべく、ウクライナ政府は、透明性を高め、汚職対策を進めようとしている。その一つの取り組みが、DREAMと呼ばれるデジタル・プラットフォームであり、中央政府・地方政府のニーズや具体的なプロジェクトの状況を可視化するものである。
近々、ウクライナ政府は今後4年にわたる復興・経済発展に関する計画を公表する。
■ セリーヌ・エマ・ラ・クール政策アドバイザー
キール世界経済研究所によれば、EUと加盟国のウクライナ支援額の合計は1320億ユーロに達し、米国のそれの約2倍となった。
また、EUはこれまで11の対露制裁パッケージを発表してきた。今後は、制裁逃れを防ぐなど、実効性の確保に注力していくことになる。
ウクライナは2年以内のEU加盟を主張し、反汚職や司法分野等で改革に熱心に取り組んでいる。一方、欧州理事会のシャルル・ミシェル議長は30年までに準備すべきとしている。
【国際経済本部】