経団連のアメリカ委員会(澤田純委員長、早川茂委員長、植木義晴委員長)および同委員会連携強化部会(豊川由里亜部会長)は6月30日、米国連邦議会歳入委員会のアール・ブルーメナウアー下院議員(民主党・オレゴン州)、ダン・キルディー下院議員(民主党・ミシガン州)、ニコール・マリオタキス下院議員(共和党・ニューヨーク州)の来日の機会をとらえ、東京・大手町の経団連会館で懇談し、米国の環太平洋パートナーシップ(TPP)への復帰を訴えた。各議員による発言の概要は次のとおり。
■ ブルーメナウアー氏
国際情勢、経済の両面で重要な時代にあるなか、日米が世界の安定の基盤となるパートナーシップをアジア地域で構築していることは心強い。
中国の世界貿易機関(WTO)への加盟が議論された当時は、加盟によって国際社会における中国の行動が改善されるだろうと期待された。しかし実際には、中国は今でも、WTOルールを遵守していない。
米国は、これまで中国の行動を変えるよう対処してこなかったために、現在、友好国との協力を深化させる必要性に迫られている。しかし、この現実は日本にとってはチャンスである。安全保障、気候変動問題、経済など、さまざまな面で日米協力の重要性が増している。
■ キルディー氏
米国は、インド太平洋経済枠組み(IPEF)における取り組みを進展させるとともに、TPP復帰に向けた対話をする余地もその意思もある。インド太平洋地域においてルール・原則をつくることで、民主主義といった価値観を広げていくことが求められている。市場アクセスを含まないIPEFは、サプライチェーン強靭化の議論の枠組みとしては不十分であり、通商協定のような米国議会も関与するかたちでのアプローチが必須である。
しかし、試合に勝つためにはルールを公正なものにするのみならず、自分自身が強くなる必要がある。サプライチェーンの構築を同志国と協力しながら進めるためにも、インフレ抑制法(IRA)などを通じて、米国の製造能力を高めることが不可欠である。
■ マリオタキス氏
TPPが当初提案されたころと比較すると、国際情勢は大きく変わっている。現在の中国の行動をみれば、米国が同志国との協力を進める必要性が大きいことは明らかである。サプライチェーンの構築にあたっては、国内回帰を志向するのみならず、友好国と協調することが不可欠である。
また、人権侵害の問題にも毅然とした対応が必要である。例えば、環境問題に対処するために原子力発電所の停止や火力発電所の許認可を見直す動きがあるが、その代替となる太陽光パネル等は中国で強制労働によって製造されることも多い。環境問題だけでなく人権問題にも対処し得る包括的な解決策を探る必要がある。
【国際経済本部】