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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年7月6日 No.3597 マーラー・オーストリア連邦産業院総裁と懇談

マーラー氏(左)と清水部会長

経団連の清水章ヨーロッパ地域委員会企画部会長は6月13日、東京・大手町の経団連会館で、オーストリア連邦産業院のハラルド・マーラー総裁と懇談した。オーストリア連邦産業院は商工会議所に相当する。マーラー総裁の発言概要は次のとおり。

オーストリアは、2025年大阪・関西万博において、AIなどのデジタル技術とグリーン技術を組み合わせたパビリオンを出展する予定である。万博は、自国の技術を紹介する良い機会であり、日本企業との連携を深めるプラットフォームとなり得る。

グリーン分野では、例えば、建築物の省エネにおいて、両国が伝統的に強みを持っている木造建築はゲームチェンジャーになると考える。オーストリアでは、個人住宅だけでなく、大規模な住宅ビルやオフィスビルでも、「パッシブハウス」と呼ばれるエネルギー効率の高い断熱システムが広く採り入れられている。

国内には、アルプス渓流をはじめ豊かな河川が数多くあり、電力需要の約6割を水力発電で賄っている。しかし自然保護の観点から、アルプス山脈に新規発電所を建設するのは難しい。そのため、今後は、小さな河川においてもスマート排水システムを備えた小規模発電所を導入していくことが重要である。あわせて、太陽光発電や風力発電を中心に再生可能エネルギーの導入を進めている。再エネの拡大にあたっては、安定した送電網が不可欠であり、スマートグリッドの整備を進めている。1970年代に行った国民投票の結果、原子力発電の廃止を決定した。一方でエネルギー資源を持たないオーストリアは、電力需要が増える冬季には、原子力エネルギーを使っている近隣諸国から電力を輸入する必要がある。エネルギー依存を低減するため、水素利用にも注力しており、ロシアからのガスパイプラインを水素輸送にも活用することを検討している。

モビリティー分野の脱炭素化について、EUでは2035年までに全新車を電気自動車とするべく取り組んでいる。個人としては、今予定されている時間軸で電気自動車のみに絞って脱炭素化を進めるのは賢明でないと考える。道は一つではなく、水素自動車や合成燃料車など、研究開発に資金を投入している他の選択肢にも道を残すべきである。また、バッテリー製造に必要な鉱物を一国に過度に依存するリスクについても考慮すべきである。若者を中心に自動車を廃止しようとする動きもあるが、視野を広く持ち、気候変動対策、経済的自由、社会の安定という三つの側面のバランスをとることが不可欠である。オーストリアでは、貨物輸送への水素自動車の導入を進めており、グローバルパートナーを模索しているところである。日本企業も候補であり、ぜひ日本との協力を拡充していきたい。

【国際経済本部】

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