経団連は5月25日、東京・大手町の経団連会館でJBIC法の改正に関する説明会を開催した。国際協力銀行(JBIC)企画部門の関根宏樹業務企画担当特命審議役が、4月7日に成立した「株式会社国際協力銀行法」(JBIC法)の一部を改正する法律のうち、(1)日本企業のサプライチェーンの強靭化(2)スタートアップ企業を含む日本企業のさらなるリスクテークの後押し(3)ウクライナ復興支援への参画――を中心に説明した。概要は次のとおり。
■ 日本企業のサプライチェーン強靭化を支援
従来、JBICの事業開発等金融において、外国企業は支援の対象外であったが、サプライチェーンの強靭化を進めるため、日本企業のサプライチェーンや産業基盤に組み込まれている外国企業を融資対象に追加した。日本企業の戦略や要請に応じ、こうした外国企業を支援することで、わが国産業の国際競争力強化を目指す。2024年3月末までの施行に向けて、今後財務省令で具体的な支援分野を特定していきたい。
また、JBICの輸入金融は、これまで資源等を外国から日本へ輸入する場合を対象にしてきたが、日本企業のグローバル展開に対応すべく、輸入金融の対象に日本企業が国外で外国企業から資源等を引き取る場合を追加した。さらに、国内大企業を経由して行う海外事業資金の融資の対象を拡大し、わが国企業のサプライチェーン強靭化に資する海外子会社への資金支援を後押しする。
■ 日本企業のリスクテークを後押し
JBICは国内のスタートアップ企業や中堅・中小企業が海外事業に必要とする資金を直接出資により支援することができなかった。このため、海外子会社を持っていないスタートアップ企業等にとっては、JBICの出資を受けるために、海外子会社を設立する必要があるといったハードルがあった。海外事業に必要な資金を国内で調達するスタートアップ企業等のニーズを踏まえ、今般の法改正により、JBICは国内スタートアップ企業や中堅・中小企業への直接出資により、海外事業に必要な資金を支援することが可能になった。
また、JBICは、16年の法改正により、リスクテーク機能を強化すべく、海外インフラ事業を対象に、個別案件ごとの償還確実性を必要としない「特別業務」を開始している。今回の法改正ではさらに、レアアース等の重要資源の開発やイノベーションの社会実装等における民間企業のリスクテークを後押しすべく、特別業務の対象に「資源開発事業」「新技術・ビジネスモデルを活用した事業」「スタートアップ企業への出資・社債取得」を追加した。
■ ウクライナ復興支援を目的とする中長期的な活動
今後、ウクライナの復興支援事業に関する長期的な資金需要が見込まれる。日本としても、ウクライナがロシア経済への依存から脱却することを想定し、早い段階から復興計画に携わることが重要である。そのための一つの手段として、今回の法改正により、欧州復興開発銀行などの国際金融機関による貸し付けに対する保証供与を可能としている。国際協調のもとで、ウクライナの復興支援に貢献していきたい。
【国際協力本部】