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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年6月15日 No.3594 OECD・BIACの活動に関する懇談会を開催 -「ルール形成の上流」としてのOECDの活用について聴く/OECD諮問委員会

新美大使

経団連は、経済協力開発機構(OECD)の公式諮問機関であるBIAC(Business at OECD)への参画を通じて、積極的にOECDの政策論議に関与してきた。2024年4月に日本のOECD加盟60周年を控えるなか、OECDの意義等について議論を深める観点から、経団連のOECD諮問委員会(稲垣精二委員長)は5月11日、東京・大手町の経団連会館でOECD・BIACの活動に関する懇談会を開催した。BIAC日本代表委員からの活動状況に関する報告に先立ち、新美潤OECD日本政府代表部特命全権大使から、説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ 「ルール形成の上流」としてのOECDの活用

OECDは、民主主義、法の支配などの価値を共有する国々で構成されており、それが最大の強みである。地政学的な緊張が高まり、国連や世界貿易機関(WTO)などグローバルなフォーラムにおける合意形成が困難となるなか、ルール形成の場として機能するOECDは重要である。ルール形成の上流として、国際経済社会が抱える課題について積極的に議論し、アジェンダ設定や問題点の整理を行い、問題解決の道筋を形成することがOECDの役割である。問題点が明らかになり、議論が煮詰まり、ルールを形成するという最終段階での意見は受け入れられにくい。日本は成熟した先進国として、ルール形成の上流から積極的に議論に参画していくことが肝要である。

■ OECDにおけるルール形成の具体例

OECDにおけるルール形成に日本が関与した具体例について、以下3点を紹介したい。

第1に、OECD多国籍企業行動指針である。同指針は1976年に策定され、数次改訂されている。2011年の同指針の改訂に際して「人権章」が新設されたが、経団連の企業行動憲章に人権尊重の条文が新設されたのは17年のことであった。その後、経済産業省が人権に関するガイドラインを策定するなど、日本の官民は出遅れていた。現在改訂作業中である指針は23年6月のOECD閣僚理事会で採択される見込みであるが、これには官民ともに日本の意見が反映されるよう努めた。

第2に、DFFT(Data Free Flow with Trust、信頼性のある自由なデータ流通)である。有益なデータが信頼を確保しながら国境を意識することなく自由に行き来するためのものである。これは日本が19年1月のダボス会議で提唱したものであり、OECDやG7、G20と連携し、ルール策定に向けた議論を積極的に主導している。データガバナンス分野は欧米諸国に比べ大幅に出遅れていたが、大きな巻き返しを図っている事例である。

第3に、BEPS(Base Erosion and Profit Shifting、税源浸食と利益移転)プロジェクトである。これは国際課税ルール全体を見直すための議論であり、日本が主導してきた。

今後のルール形成の主戦場としては、環境リスクやエネルギー安全保障にかかわる分野が想定される。例えば、クリーンエネルギーの推進のために不可欠であるクリティカルミネラル(重要な鉱物)は、製錬、加工、製品化の全工程が中国一国に集中しており、グリーン化を進めるほど中国に依存する脆弱な構造になっている。国内製造業への影響が大きい日本として、OECDや国際エネルギー機関(IEA)を活用してルール形成を進めていく必要がある。

OECD加盟60周年を迎える24年は、わが国がOECDにおいてリーダーシップを発揮し、イニシアティブを打ち出す重要な機会と考えている。

【国際経済本部】

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