定時総会の開催にあたり、一言ごあいさつを申し上げます。
世界は「ポストコロナ」という新たな時代を迎えております。今こそ、「生態系の崩壊」「格差の拡大・固定化・再生産」といった社会課題に、真正面から取り組み、サステイナブルな資本主義を実現する好機ととらえております。
2021年6月の経団連会長就任以来、「サステイナブルな資本主義」のコンセプトのもと、社会課題を解決しつつ、日本経済を再び成長軌道に戻すことに注力してまいりました。
われわれの「サステイナブルな資本主義」は、岸田文雄内閣総理大臣が提唱されている「新しい資本主義」と軌を一にするものであります。
グリーントランスフォーメーション(GX)、デジタルトランスフォーメーション(DX)、スタートアップ振興等の重要政策課題に対して、官民連携で取り組みを進めるべく、私自身、経済界の声を届けてまいりました。
就任2期目を迎え、「成長と分配の好循環の実現」を通じて、日本経済にダイナミズムを取り戻し、世界における日本の存在感を高めていく決意です。
「成長」には、科学技術とイノベーションの力を通じた、わが国の産業競争力の強化が求められます。
とりわけ、GXの推進は成長戦略の柱であり、今月、経団連の提言を全面的に盛り込むかたちで、GX推進法が成立しました。DX、スタートアップ振興にも、引き続き、優先度高く取り組むとともに、新産業分野では、エンタメ・コンテンツ産業、バイオ産業、モビリティー産業について、積極的に政策提言を行ってまいります。
これらの取り組みによって得られた成長の果実を、適正な「分配」を通じて、次の成長につなげていかなければなりません。いわゆる「成長と分配の好循環」であります。
そのためには、「分厚い中間層」の形成に向けた取り組みが急がれ、「マクロ経済政策」「社会保障・税制」「労働政策」の三つの政策分野について、官民連携で、全体感をもった一体的取り組みが求められます。これこそが、長年にわたるわが国経済の低成長を打破し、持続的な経済成長の実現に必要なことと考えます。
こうしたなか、本年の春季労使交渉では、皆さまのご尽力により、約30年ぶりに1万円台/約3.9%の高い水準の月例賃金の引き上げが実現しています。
こうしたモメンタムを来年以降も継続し、人への投資、さらには構造的な賃金引上げにつなげ、「賃金と物価の好循環」の実現を目指してまいります。
世界に目を転じますと、地政学的緊張の高まりや、ロシアによるウクライナ侵略により、世界は分断の危機に直面しております。
自由で開かれた国際経済秩序の維持・強化は、わが国が追求すべき活路であり、世界の分断は何としても回避しなければなりません。経済安全保障には十分留意しつつも、日本企業が積極的にグローバルな事業を展開できる環境を整備していくことが肝要です。
先般開催されたG7広島サミットでは、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜くという強い決意や、途上国をはじめとする国々への関与の強化が示されました。岸田首相の卓越したリーダーシップに、心から敬意を表する次第です。
また、G7サミットに先立ち、経団連はB7東京サミットを主催しました。開会式では、岸田首相よりごあいさつをいただき、サミット終了後には、首相に直接、共同提言を手交させていただきました。
経団連は引き続き、民間経済外交を積極的に展開し、自由で開かれた国際経済秩序の再構築を働きかけてまいります。
最後に、2025年大阪・関西万博開幕まで、残すところ2年弱となりました。万博は、Society 5.0 for SDGsのモデルを日本から世界に発信する絶好の機会です。全国的な機運醸成に向けて、引き続き、皆さまのご協力をよろしくお願い申し上げます。
先ほど申し上げた「分厚い中間層」の形成に向けた、マクロ経済政策、社会保障・税制、労働政策の三つの政策分野の取り組みには、いずれも「社会」という視点が欠かせません。
この「社会」という視点こそが、「成長と分配」の好循環を実現し、わが国経済にダイナミズムを取り戻すために欠かせないものと考えるからであります。
だからこそ、私は、経団連会長に就任以来、「from the social point of view(社会性の視座)」の重要性を強調してまいりました。
今年度も、経団連は、社会性の視座に立脚し、「サステイナブルな資本主義」の実践に取り組んでまいります。
皆さま方におかれましては、変わらぬご理解とご協力を、よろしくお願い申し上げます。